モバイルバッテリー・電源

停電に備えるガジェット12分野を比較 必要な電力量を時間別に試算する

停電への備えを考えるとき、多くの人が最初に手に取るのはモバイルバッテリーです。ただし「何ワットアワー必要なのか」を計算せずに選ぶと、いざというときに半日ももたないという事態になります。結論からいうと、必要な容量は停電が何時間続くかと、その間に何を動かすかの掛け算で決まります。この記事では停電時に使う12分野の機器を比較し、公表されている消費電力の目安から必要な電力量を時間別に試算します。あわせて、農林水産省が示す家庭備蓄の考え方や、製品評価技術基盤機構(NITE)が公表しているリチウムイオン電池の事故情報など、判断の土台になる公的な情報も整理します。

この記事でわかること

停電の継続時間ごとに必要になる装備/機器ごとの消費電力の目安と必要電力量の試算方法/mAhとWhの換算の考え方/12分野の役割と費用の目安/リチウムイオン電池を安全に扱うための公的な注意点/よくある失敗

選定基準 停電の長さで必要な装備は変わる

備えを一律に語ると話が噛み合わなくなります。数時間で復旧する停電と、数日にわたる停電では、必要な機器がまったく違うためです。本記事では停電の継続時間を4段階に分け、それぞれで役に立つ装備を分類しました。

停電の継続時間による4段階

段階 想定される状況 この段階で効く装備
第1段階 3時間まで 落雷や設備故障による局所的な停電。多くはこの範囲で復旧する スマートフォンの残量、懐中電灯、乾電池式の照明
第2段階 12時間まで 台風や地震で広範囲の設備が損傷した初日 モバイルバッテリー、乾電池式ラジオ、LEDランタン
第3段階 1日から3日 復旧作業に日数がかかる規模。通信網や水道にも影響が出はじめる ポータブル電源、携帯回線の二重化、保冷手段
第4段階 1週間以上 倒木や設備の広域損壊で復旧が長期化した状態 ソーラーパネルによる充電手段、家庭用蓄電池、カセットコンロ

令和元年房総半島台風(2019年の台風第15号)では、記録的な暴風で送電線の鉄塔や電柱が倒壊し、倒木や飛散物による配電設備の故障も重なって、首都圏をはじめ最大約93万4,900戸が停電しました。内閣府の令和2年版防災白書は、電力について現場の被害状況の確認や倒木の処理に時間を要したことなどから復旧作業が長期化したとしています。停電が長引いたことで携帯電話の基地局は非常用電源を維持できなくなり、一部の地域で基地局が停波しました。一部の市町では防災行政無線も停止し、停電による断水も起きています。内閣府の被害状況報から東京電力管内の停電戸数を拾うと、次のように推移しました。

時点(2019年) 停電の状況(東京電力管内)
9月9日 7時50分 最大約93万4,900戸(最大供給支障戸数)
9月12日 13時 約33万1,500戸(すべて千葉県)
9月18日 6時30分 約4万9,100戸(すべて千葉県)
12月5日 16時 大規模な倒木や土砂崩れなどによる一部の復旧困難箇所を除き、復旧完了

発生から9日たっても約4万9,100戸が停電したままでした。千葉県内の水道では最大13万9,744戸が断水しています。第4段階は現実に起こり得る想定として扱う必要があります。

どの段階まで備えるかは住まいの条件で変わります。集合住宅の中層階で断水の心配が小さい場合と、戸建てで井戸ポンプや電動シャッターに電気が必要な場合とでは、優先すべき機器が違います。まず自宅で「電気が止まると困るもの」を書き出すところから始めると、必要な容量の見積もりが具体的になります。

必要な電力量を試算する

ここが本記事の中心です。容量の単位を揃えたうえで、動かしたい機器の消費電力を積み上げます。

mAhとWhの換算を先に理解する

モバイルバッテリーの容量は「10,000mAh」のようにミリアンペアアワーで表記されるのが一般的ですが、この数値は内部のリチウムイオンセルの電圧(公称3.6Vまたは3.7V)を基準にしたものです。実際にUSB端子から取り出せる電力量を知るには、ワットアワー(Wh)に換算します。

表記容量 Wh換算(3.7V基準) 変換ロスを見た実用値の目安
5,000mAh 約18.5Wh 約12〜14Wh
10,000mAh 約37Wh 約25〜28Wh
20,000mAh 約74Wh 約50〜56Wh
ポータブル電源 500Wh級 500Wh 約400〜450Wh

昇圧回路での損失があるため、表記容量の7割程度が実際に使える量だと考えておくと見積もりを外しにくくなります。気温が低い環境ではさらに効率が落ちます。なお航空機に持ち込めるモバイルバッテリーの上限もWh表記で定められているため、換算の考え方は旅行時にも使えます。

機器ごとの消費電力の目安

数値は一般的な製品の公表仕様から見た幅です。製品による差が大きいため、手持ちの機器の仕様表で置き換えてください。

機器 消費電力または1回あたりの必要量 備考
スマートフォンの満充電1回 約15〜20Wh 電池容量4,000mAh級で変換ロス込み
Wi-Fiルーター 5〜12W 24時間で約120〜290Wh
ノートPC 30〜65W 充電しながら使う場合
LEDランタン・電球 3〜10W 4時間点灯で12〜40Wh
扇風機(DCモーター) 10〜30W 8時間で80〜240Wh
電気毛布 40〜80W 強弱で大きく変わる
家庭用冷蔵庫(300L級) 1日あたり約700〜900Wh 年間消費電力量250〜330kWhから日割り
電子レンジ・ドライヤー 600〜1,300W ポータブル電源の定格出力を超えることが多い

ポータブル電源には「容量(Wh)」とは別に「定格出力(W)」の上限があります。容量が大きくても定格出力が300Wの製品では、消費電力1,000Wのドライヤーは動きません。動かしたい家電の消費電力が定格出力を超えていないか、容量とは別に確認してください。

継続時間別の必要電力量シミュレーション

2人世帯が、スマートフォン2台とWi-Fiルーター、LED照明1灯を維持する前提で積み上げた試算です。冷蔵庫や冷暖房を含めると桁が変わるため、別枠として扱います。

停電の長さ スマホ2台 ルーター 照明 合計の目安 現実的な選択肢
12時間 40Wh 約100Wh 約40Wh 約180Wh 20,000mAh級のモバイルバッテリー2個、または小型ポータブル電源
1日 40Wh 約200Wh 約60Wh 約300Wh ポータブル電源400〜500Wh級
3日 120Wh 約600Wh 約180Wh 約900Wh 1,000Wh級、または500Wh級+ソーラーパネル
7日 280Wh 約1,400Wh 約420Wh 約2,100Wh 蓄電容量だけで賄うのは非現実的。充電手段の確保が前提

この表からわかるのは、停電が3日を超えると、蓄えておく発想では足りなくなるという点です。第4段階に備えるなら、ソーラーパネルや自動車からの給電のように、電気を作るか外から持ってくる手段が必要になります。逆にいえば、多くの停電が収まる12時間までを想定するなら、モバイルバッテリー2個で足りる計算になります。

Wi-Fiルーターの比重が大きいことにも注目してください。停電中に固定回線が生きているとは限らないため、通信はスマートフォンのモバイル回線に任せ、ルーターは動かさないという判断もあります。その場合、1日あたりの必要量は100Wh前後まで下がります。

停電に備える12分野の比較

ここからは分野ごとに役割と選び方を整理します。表の「効く段階」は、先ほどの4段階のうちどこで力を発揮するかを示しています。

分野 効く段階 費用の目安 主な役割
モバイルバッテリー 第1〜2段階 2千〜1万円 スマートフォンの通信を維持する
ポータブル電源 第2〜3段階 3万〜20万円 家電をコンセントから動かす
家庭用蓄電池 第3〜4段階 100万円前後から 住宅の一部回路を継続して動かす
ソーラーパネル・手回し充電 第4段階 5千〜5万円 電気を作り続ける
LED照明・ランタン 第1〜4段階 1千〜8千円 夜間の生活と安全を確保する
乾電池式ラジオ 第2〜4段階 2千〜1万円 通信網が止まっても情報を得る
通信回線の二重化 第2〜4段階 月数百円から 1社の障害や基地局停止に備える
情報収集アプリ 第1〜4段階 無料 避難情報と復旧見通しを得る
見守り・安否確認機器 第1〜3段階 3千〜1万5千円 家族の居場所と安否を確認する
保冷手段 第2〜3段階 2千〜2万円 食品と医薬品を守る
車からの給電 第3〜4段階 2千〜3万円 燃料がある間は発電機として使う
データの避難 平時の備え 無料〜年1万円 機器が失われても記録を残す

モバイルバッテリー まず1個目をどう選ぶか

停電対策の入口です。容量は10,000mAh前後が扱いやすく、スマートフォン2台をそれぞれ1回強充電できる計算になります。出力側では、USB Power Delivery(USB Promoter Groupが策定し、USB-IFが規格書を公開している給電規格)に対応していると充電時間を短縮できます。複数台を同時に充電する予定なら、出力ポートの数と合計出力の上限も確認しておきます。容量の考え方はモバイルバッテリーの選び方とおすすめの容量の目安で詳しく扱っています。

モバイルバッテリーは2018年2月1日から電気用品安全法(PSE法)の規制対象となり(経過措置は2019年1月31日まで)、PSEマークの表示がない製品は、事業者が販売したり販売目的で陳列したりすることが禁じられています。購入時は本体または包装のPSEマーク(モバイルバッテリーは丸形)の有無を確認してください。これは経済産業省が公表しているルールです。

ポータブル電源 容量と定格出力を分けて見る

コンセント付きの大容量バッテリーです。試算表のとおり、1日程度の停電を想定するなら400〜500Wh級が目安になります。選ぶときは容量(Wh)と定格出力(W)を分けて確認し、動かしたい家電の消費電力が定格出力の範囲に収まるかを見ます。電池の種類も判断材料で、リン酸鉄リチウムイオン電池を採用した製品は充放電の繰り返しに強いとされ、価格は高めになる傾向があります。詳細はポータブル電源の選び方、容量と出力の見極め方にまとめました。

家庭用蓄電池 住宅設備としての選択肢

分電盤に接続し、停電時に特定の回路へ自動で給電する住宅設備です。太陽光発電と組み合わせる構成が一般的で、初期費用は100万円台からと大きく、設置工事も必要になります。可搬性がない代わりに容量が大きく、冷蔵庫や照明を含む生活の維持まで視野に入ります。ポータブル電源との違いは家庭用蓄電池とポータブル電源の違い、どちらを選ぶべきかで比較しています。

ソーラーパネル・手回し充電 第4段階の備え

停電が1週間に及ぶ想定では、蓄えた電気を使い切ったあとの手段が要ります。折りたたみ式のソーラーパネルは、ポータブル電源と組み合わせて日中に充電する使い方が基本です。公称100Wのパネルでも、天候や設置角度で実際の発電量は下がるため、表示の5〜7割程度を見込んでおくのが現実的です。手回し充電付きのラジオは、スマートフォンを満充電にする用途には向きませんが、数分間の通話や短時間の点灯には使えます。

LED照明・ランタン 消費電力が小さく効果が大きい

数ワットで数時間の明かりを確保できるため、電力量あたりの効果がもっとも高い分野です。停電時は足元の安全確保が優先されるので、天井を照らして部屋全体を明るくできる拡散型のランタンが1つあると生活が変わります。平時からスマート照明を使っている場合、Wi-Fiや電源が失われると操作できなくなる点には注意が必要です。乾電池式の照明を別に用意しておくのが基本になります。部屋ごとの照明の考え方はスマート照明の選び方 部屋別のおすすめの選択基準で扱っています。

乾電池式ラジオ 通信が止まったときの情報源

停電が長引くと基地局の非常用電源も尽き、携帯電話網が使えなくなる地域が出ます。令和元年房総半島台風では、停電が想定を超えて長引いたため基地局の非常用電源が持たず、一部の地域で携帯電話の基地局が停波しました。一部の市町では防災行政無線も停止しています。乾電池式のラジオは消費電力が小さく、電池の備蓄さえあれば長時間使えます。AM放送のFM補完中継局(ワイドFM)に対応していると、AM局の放送をFM帯で受信できるため、建物内でも受信状況が安定しやすくなります。

通信回線の二重化 1社の障害に備える

停電に限らず、通信事業者側の大規模障害でも同じ問題が起きます。物理的なSIMカードとeSIMを組み合わせれば、1台のスマートフォンで2社の回線を持てます。ふだんは片方を待機させておき、障害時に切り替える運用です。eSIMの仕組みや2回線の使い分けはスマホのeSIM対応機種の見分け方 確認手順を解説で解説しています。回線の選び方そのものは格安SIMとキャリア回線、どちらを選ぶべきか徹底比較が参考になります。

情報収集アプリ 電池を使わずに備える部分

費用がかからず、平時の設定だけで効果が出る分野です。気象庁が発表する緊急地震速報や特別警報は携帯電話事業者の緊急速報メールで配信され、受信設定が有効かどうかは端末側で確認できます。自治体の防災アプリや、電力会社が公開している停電情報のページも、あらかじめブックマークしておくと復旧見通しを確認しやすくなります。画面の明るさを下げ、不要なアプリの通信を止めることでも電池のもちは変わります。省電力の工夫はスマホのストレージ容量、64GBと128GBどちらを選ぶべきかやスマホの初期設定と使いながら見直す設定まとめにも通じます。

見守り・安否確認機器 家族が離れている場合

停電と同時に通信が不安定になると、家族の状況が分からない時間が生まれます。GPSトラッカーや見守り機能付きの端末は、電池が持続する限り位置情報を伝えられます。ただし通信が途絶すれば同じく使えなくなるため、集合場所と連絡手段を事前に決めておくことが前提です。機器の選び方は防犯ブザーとGPSトラッカーの選び方 子供や高齢者の見守りに、子ども向け端末はキッズ携帯・見守りスマホの選び方、年齢別のポイント、離れて暮らす親の見守りは見守りカメラとは?特徴・選び方まで徹底解説で扱っています。

保冷手段 冷蔵庫を動かすより現実的な選択

試算表のとおり、冷蔵庫を1日動かすには700〜900Whが必要で、ポータブル電源の容量をほぼ使い切ります。停電中は扉の開閉を減らして庫内の温度上昇を抑え、保冷剤とクーラーボックスに要冷蔵の医薬品や食品を移すほうが電力の使い方として効率的です。車載冷蔵庫のように少ない消費電力で稼働するモデルを別に備えておく方法もあります。カセットコンロと保存食の備えについては、農林水産省が家庭備蓄の指針を公開しています。

車からの給電 燃料の残量が容量になる

自動車のシガーソケットから取れる電力は、一般的な乗用車で120W前後(12V×10A程度)が上限です。それ以上の家電を動かすにはインバーターの容量と車両側の許容電流を確認する必要があります。停電が長引く局面では、燃料の残量がそのまま電力の備蓄量になります。車内で暖を取る場合の一酸化炭素の危険や、積雪時の排気口の閉塞には十分な注意が必要です。

データの避難 平時にしかできない備え

機器が水没・破損すれば、中のデータは電気の問題とは無関係に失われます。手元の外付けドライブとクラウドの二重化が基本で、これは停電が起きてからでは間に合いません。判断材料はスマホのストレージ容量、64GBと128GBどちらを選ぶべきかと外付けSSDとHDD、容量と用途で選び分けるポイントにまとめています。

公的機関が示している備えの基準

備蓄の量や機器の扱いについては、感覚ではなく公表されている指針を出発点にするほうが判断がぶれません。

農林水産省 家庭備蓄の考え方

農林水産省は「災害時に備えた食品ストックガイド(平成31年3月)」などで家庭備蓄の方法をまとめています。単身者向けの案内では、公的な支援物資が届き始めるのは4日目以降だとして、まずは3日分、目標は1週間分の食品をストックするよう呼びかけています。水の目安は1人1日およそ3L(飲料水と調理用水)で、カセットコンロとボンベも備蓄品に挙げられています。備え方としては、日頃使う食品を多めに買い置きし、使った分を買い足していくローリングストックが紹介されています。乳幼児や高齢者、慢性疾患や食物アレルギーのある人に向けた別のガイドも公開されています。電源の備えを何日分にするかを決めるときも、この3日と1週間という区切りが目安として使えます。

製品評価技術基盤機構(NITE) リチウムイオン電池の事故情報

NITEが公表している情報によれば、2021年から2025年までの5年間に通知されたリチウムイオン電池搭載製品の事故は2,140件で、製品別ではモバイルバッテリーの事故が最も多くなっています。事故は気温の上昇とともに増え、8月にピークを迎える傾向があるとされます。事故を防ぐ行動として、経済産業省や環境省などの関係省庁が連携して呼びかけているのが「3つのC」で、NITEも発表の中で紹介しています。

3つのC 内容
賢く選ぶ 販売事業者の連絡先や製品情報、リコール情報を確認する。表示マークを確かめる
丁寧に使う 高温になる場所で使用・保管しない。強い衝撃や圧力を加えない。異常を感じたら使用を中止する
正しく捨てる リチウムイオン電池が使われているかを確認し、メーカーの回収や自治体の回収区分に従って処分する

防災用として買ったモバイルバッテリーを車内や窓際に置いたままにするのは、3つのCの「丁寧に使う」に反する保管方法です。夏の車内は高温になります。備蓄品として保管する場合は、直射日光の当たらない室内に置き、半年に1回程度は残量を確認して補充してください。膨らんでいる、熱を持つ、異臭がするといった異常があれば使用をやめ、自治体やメーカーの回収に出します。

経済産業省 モバイルバッテリーのPSE規制

モバイルバッテリーは2018年2月1日から電気用品安全法の規制対象となり(1年の経過措置は2019年1月31日まで)、電気用品の製造・輸入・販売の事業を行う者は、PSEマークの表示がない製品を販売したり販売目的で陳列したりできません(同法第27条)。モバイルバッテリーに表示されるのは丸形のPSEマークで、これは特定電気用品以外の電気用品に該当するためです。違反して販売・陳列した場合の罰則は、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科と定められています。中古品やフリーマーケットで入手する場合は、マークの有無とリコール情報を確認してください。

持ち出す場面と、家の設備との関係

停電への備えは、家に据える機器と持ち出す機器の2つに分かれます。同じモバイルバッテリーでも、家で使う前提と旅行に持っていく前提では制約が違います。

場面 効いてくる制約 整理した記事
旅行や出張に持ち出す 機内持ち込みのルール。2026年4月24日から1人2個までになった 旅行・出張のガジェット14分野を比較 2026年4月からの機内持ち込みルールに対応
家の機器を自動化している 停電時にどう戻るか。復電後の挙動を確認しておく スマートホームの始め方 12分野を導入効果で採点しMatter対応の考え方まで解説

スマートホーム機器を導入している場合、停電から復旧したときに設定が初期化される機器と、そのまま復帰する機器があります。備蓄する電力量とは別に、この点を確認しておいてください。

よくある失敗と注意点

容量だけを見て定格出力を見落とす

1,000Whのポータブル電源でも、定格出力が300Wなら消費電力1,200Wの電子レンジは動きません。動かしたい家電の消費電力を先に調べ、定格出力がそれを上回る製品を選びます。

備蓄したまま放置して残量がゼロになる

リチウムイオン電池は使わなくても少しずつ放電します。いざというときに空だったという事態を避けるため、保管中も定期的に残量を確認し、5割前後を保つようにします。

スマート機器に頼りきる

スマート照明もスマートロックも、電源とネットワークが前提です。停電時に代替できる手動の手段を1つずつ用意しておきます。

充電ケーブルの種類が足りない

家族の端末でUSB Type-CとLightningが混在していると、片方のケーブルしかない状態では充電できない人が出ます。停電用の袋に、必要な種類のケーブルを人数分入れておきます。

発電機を屋内で使う

燃料を使う発電機は排気に一酸化炭素を含みます。屋内やガレージ、換気の悪い場所での使用は生命に関わります。屋外で使用し、排気が窓や換気口に向かわない位置に設置してください。 発電機本体の選び方(インバーター式か従来型か、ガソリン式かカセットガス式か)は非常用発電機の選び方 インバーター式と燃料の種類、屋内使用の危険性で扱っています。

よくある質問

モバイルバッテリーは何個あれば足りますか

12時間程度の停電を想定するなら、10,000mAh級を2個持っていればスマートフォン2台の通信を維持できる計算になります。3日以上に備えるならポータブル電源に移行するほうが効率的です。個数を増やすより、容量の大きい機器を1台加えるほうが管理しやすくなります。

ポータブル電源はどの容量を買えばよいですか

まず動かしたい機器を決めてから容量を決めます。スマートフォンと照明、ルーターの維持が目的なら400〜500Wh級、冷蔵庫を断続的に動かしたいなら1,000Wh級以上が視野に入ります。ただし冷蔵庫を丸1日動かすと大半を消費するため、保冷剤との併用を前提にしたほうが現実的です。

ソーラーパネルは本当に使えますか

晴天で適切な角度に設置できれば充電できますが、公称値どおりの発電は期待しないほうがよいでしょう。天候と設置角度、パネル表面の汚れで実際の発電量は変わります。公称100Wのパネルで実測50〜70W程度を見込み、蓄電池と併用する設計にします。

停電中に冷蔵庫の中身はどのくらい持ちますか

扉の開閉を控えれば、庫内の温度上昇はしばらく抑えられます。ただし食品の状態は保存条件で変わるため、時間で一律に判断するのは避けてください。要冷蔵の医薬品がある場合は、保冷剤とクーラーボックスに移すことを優先します。医薬品の保管条件は処方元や添付文書の指示に従ってください。

スマートフォンの電池を長持ちさせる方法はありますか

画面の明るさを下げる、使わないアプリの通信と位置情報を止める、省電力モードを有効にする、といった設定が基本です。電波が弱い場所では端末が出力を上げて電池を消耗するため、圏外が続く状況では機内モードにして定期的に確認する運用が有効です。

手回し充電のラジオでスマホは充電できますか

製品によっては可能ですが、発電量が小さいため満充電には向きません。数分の通話や短時間の照明を確保するための最終手段と考えてください。主力はモバイルバッテリーとポータブル電源に置きます。

備えた機器の点検はどのくらいの頻度で必要ですか

半年に1回を目安に、残量の確認と補充、外観の異常の有無を点検します。防災の日や年末年始のように時期を決めておくと忘れにくくなります。乾電池は使用推奨期限を確認し、期限が近いものは日常使いに回して入れ替えます。

賃貸住宅でもできる備えはありますか

蓄電池のような設置工事を伴う設備は難しくても、ポータブル電源やモバイルバッテリー、乾電池式の照明とラジオは工事なしで導入できます。共用部の非常用電源の有無や、停電時にオートロックや機械式駐車場がどうなるかを管理会社に確認しておくと、備えの優先順位を決めやすくなります。

まとめ

停電の備えは、機器を並べる前に何時間の停電に、何を動かして耐えるかを決めるところから始まります。2人世帯でスマートフォンと照明、ルーターを維持する条件では、12時間で約180Wh、1日で約300Wh、3日で約900Whという試算になりました。3日を超えると蓄えるだけでは足りず、ソーラーパネルや車からの給電といった補充手段が必要になります。農林水産省が家庭備蓄について、まずは3日分、目標は1週間分としているのも同じ時間軸です。あわせて、リチウムイオン電池はNITEが公表する事故件数で最も多い製品群でもあります。買って備えるだけでなく、高温の場所に置かない、定期的に残量を確認する、異常があれば使わないという扱い方まで含めて備えとして考えてください。

出典

農林水産省「家庭備蓄ポータル」「災害時に備えた食品ストックガイド」/製品評価技術基盤機構(NITE)によるリチウムイオン電池搭載製品の事故情報および注意喚起(3つのC)/経済産業省 電気用品安全法(2018年2月1日からのモバイルバッテリーの規制対象化、経過措置は2019年1月31日まで)/内閣府の令和元年房総半島台風(2019年台風第15号)に関する被害状況報、令和2年版防災白書、検証チームの中間とりまとめ/電気用品安全法(e-Gov法令検索)/USB-IF(USB Implementers Forum)のUSB Power Delivery/気象庁の緊急地震速報・特別警報に関する公表資料

平常時の電気代の見積もり方については家電の電気代を見積もる方法 省エネラベルの読み方と機器別の考え方をご覧ください。機器ごとの消費電力の目安も掲載しています。

備蓄したモバイルバッテリーの保管場所には注意が必要です。高温下での保管は出火原因の上位に挙げられています。詳しくはリチウムイオン電池の火災を防ぐ 統計で見る出火原因と正しい捨て方をご覧ください。

停電が長引く場合に備え、太陽光でスマートフォン等を充電できるソーラーチャージャーを組み合わせる選択肢もあります。パネル単体型とバッテリー内蔵型の違いはソーラーチャージャーの選び方 パネル単体型とバッテリー内蔵型の違いで扱っています。

停電時の情報源として備えるラジオの選び方は防災ラジオの選び方 電源方式とワイドFM対応で選ぶにまとめました。電源方式の比較とワイドFM対応の確認方法を扱っています。

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