モバイルバッテリー・電源

防災ラジオの選び方 電源方式とワイドFM対応で選ぶ

停電への備えを考えるとき、モバイルバッテリーの次に検討されるのがラジオです。停電が長引くと携帯電話の基地局も止まり、スマートフォンで情報を得られなくなる場面があります。令和元年房総半島台風(2019年台風第15号)では、停電や伝送路の断絶によって一部の地域で携帯電話の基地局が停波し、一部の市町では防災行政無線(同報系)の局も停止しました。この記事では防災用ラジオの選び方を、電源方式とワイドFM対応という2つの軸で整理します。あわせて、ラジオを備えたあとの点検の仕方も扱います。買って置いておくだけでは、いざというときに動かないことがあるためです。

この記事でわかること

停電時にラジオが機能する理由/電源方式5種類の比較と、備えとしての向き不向き/ワイドFM(FM補完放送)とは何か/選ぶときに見る6項目/備えたあとの点検の頻度と内容

なぜ停電時にラジオなのか

理由 内容
通信網に依存しない 放送は一方向に電波を送る仕組みで、基地局や回線が混雑しても影響を受けにくい
消費電力が小さい 乾電池数本で数十時間動く製品がある。スマートフォンの電池を温存できる
地域の情報が得られる コミュニティFMや地元局は、その地域の避難所や給水の情報を流す
操作が簡単 電源とダイヤルだけで使える。停電の暗がりでも扱える

スマートフォンがあれば足りるように思えますが、停電が続くと基地局の非常用電源も尽きます。内閣府がまとめた台風第15号の被害状況でも、携帯電話の基地局の主な停波原因として「伝送路断及び停電」が挙げられています。そのときに残る情報源がラジオです。備えとしての位置づけは停電に備えるガジェット12分野を比較 必要な電力量を時間別に試算するで、停電の継続時間ごとに整理しています。

電源方式で選ぶ

防災ラジオの電源方式5種類(乾電池・充電池内蔵・手回し発電・ソーラー・USB充電)の長所と短所、備えとしての評価をまとめた図
図 防災ラジオの電源方式の長所・短所と備えとしての評価(記事の表をもとに作成)
方式 長所 短所 備えとしての評価
乾電池 備蓄しやすい。長時間動く。電池さえあれば復旧まで使える 電池の残量管理が必要 もっとも確実
充電池内蔵 繰り返し使える。普段使いしやすい 保管中に自然放電する。いざというとき空の可能性 単独では不安
手回し発電 電源が尽きても回せば聞ける 回し続ける必要がある。発電量は小さい 最後の手段として
ソーラー 日中に充電できる 天候と設置角度に左右される。発電量は小さい 補助として
USB充電 モバイルバッテリーから充電できる 充電手段が別に必要 他の方式との併用向き

結論から言えば、乾電池で動くことを最優先にしてください。手回しやソーラーは魅力的に見えますが、発電量は小さく、長時間の運用を支えるものではありません。それらは「電池が尽きたあとの最後の手段」として位置づけるのが実際的です。多くの製品が複数の方式に対応しているので、乾電池を主、その他を補助と考えて選びます。

充電池を内蔵した製品は、保管しているだけでも少しずつ放電します。減り方は電池の種類によって差があり、たとえばパナソニックは充電池eneloopのスタンダードモデルについて、満充電後に室温(20℃)で置いた場合の残存容量を1年後約90%、10年後約70%と公表しています。ラジオに内蔵された充電池がどの程度もつかは、機種ごとに仕様表で確認してください。備蓄品として押し入れに入れたまま数年経つと、いざというときに動かないことがあります。乾電池式であれば、電池を別に備蓄しておけば本体の状態に左右されません。電池の使用推奨期限を確認し、期限が近いものは日常使いに回して入れ替えてください。

ワイドFM(FM補完放送)への対応

選ぶときにもう一つ確認したいのが、ワイドFMに対応しているかどうかです。

ワイドFMとは、AM放送の番組をFM放送用の周波数を使って放送する仕組みです。総務省が推進しており、目的は2つあります。ひとつは都市部の受信障害や外国波の混信、地形による難聴への対策。もうひとつが災害対策です。

ワイドFMの利点 内容
建物内でも受信しやすい FMの電波はAMに比べて建物内や都市部で安定しやすい
雑音が少ない AMは電気製品からのノイズを拾いやすい
災害時の備えになる 総務省はFM補完中継局の利点として、海岸部の災害時でもアンテナが高い場所にあることを挙げている

総務省は、AM放送とFM放送の聞こえ方の違いを次のように整理しています。

項目 AM放送 FM放送
建物内(鉄筋) 電波が入りにくく、聞こえにくい 電波が入りやすく、聞こえやすい
山陰 回り込みやすく、聞こえやすい 回り込みにくく、聞こえにくい
到達範囲 広い(海外にも電波が届く) 中程度(数10km〜100km程度)
電気雑音 電波の強弱に関わらず雑音として出る 放送電波が強ければ影響は少ない

受信周波数が90.0MHz以上に対応しているかを仕様表で確認してください。上限は95.0MHzまでのものと99.0MHzまでのものがあります。古いラジオはこの帯域に対応していないため、ワイドFMを受信できません。手持ちのラジオを備えとして使うつもりなら、この点を確認する価値があります。AM放送については、民間AMラジオ局が運用を休止して影響を検証する総務省の特例措置が進んでいます。2026年10月に確認した総務省のページでは、AMラジオ放送を休止している放送事業者は27社、AM局数は88局とされ、第二期特例措置の適用期間は2025年9月1日〜2026年10月31日、休止は事業者によって最長2028年10月31日まで行われる予定です。NHKのAMラジオ放送はこの特例措置の対象外です。休止する事業者は、ワイドFMを含むFM放送などの代替手段で番組を聴けるようにすることとされているため、これから買うならワイドFM対応を選んでおくほうが長く使えます。

2025年にFM放送用の周波数の上限が95.0MHzから99.0MHzに広がった

総務省は、FM放送用として使える周波数帯の上限を95.0MHzから99.0MHzへ引き上げる省令改正案を、令和7年(2025年)4月10日の電波監理審議会に諮問しました。審議資料には、AM局のFM転換やFM補完中継局(ワイドFM)を設けるにあたって、FM放送用の周波数を確保する必要があり、事業者へのニーズ調査の結果、約4MHz分を広げれば対応できる見込みとなった、と説明されています。総務省のワイドFMのページにも、令和7年5月19日から使用帯域を76.0〜95.0MHzから76.0〜99.0MHzに拡大したこと、90.0〜99.0MHz対応の受信機が必要なことが記されています。

これまで「ワイドFMは95.0MHzまで受信できれば足りる」と説明されることが多かったため、購入前に仕様表の受信周波数の上限を確認しておくと安心です。総務省の審議資料には、FM転換後の放送やFM補完中継局の放送を受信するには、その周波数に対応したラジオ受信機が必要という注記があります。地元局が実際にどの周波数を使っているかは、総務省の「全国民放FM局・ワイドFM局一覧」(令和7年4月1日現在)で、地域ごとに確認できます。たとえば関東エリアのワイドFMは、TBSラジオ90.5MHz、文化放送91.6MHz、ニッポン放送93.0MHz、アール・エフ・ラジオ日本92.4MHzと掲載されており、どれも95.0MHz以下です。

今回の改正は上限の拡張で、すでに使われている90.0〜95.0MHzの局が聞けなくなるという内容ではありません。ただ、今後99.0MHzまでの範囲に局が増えていく場合、受信範囲が狭い旧型のラジオでは聞けない局が出る可能性があります。備えとして買うなら、受信周波数の上限が広いモデルのほうが選択肢を残せます。

審議資料が触れている、停電時のラジオの位置づけ

同じ審議資料には、ラジオ放送の経営の選択肢を広げる際に、インターネット配信でもラジオ番組が聴かれている実態に配慮しつつ、「停電時においても情報の伝送が可能なメディアとしての有用性に留意することが必要」と記されています。スマートフォンのアプリで聴く方法とは別に、乾電池で動く専用のラジオを備えておく意味を、国の資料も踏まえている形です。

選ぶときに見る6項目

項目 確認するポイント
電源方式 乾電池で動くか。使用する電池の種類と本数
連続使用時間 電池1組で何時間聞けるか。カタログの数値を確認する
ワイドFM対応 受信周波数が90.0MHz以上に対応しているか。上限が99.0MHzまでか95.0MHzまでかも見る
大きさと重さ 持ち出す前提なら小型。据え置きなら音量と受信感度を優先
操作のしやすさ 暗がりで操作できるか。高齢の家族が使うなら選局のしやすさ
防滴性能 屋外や避難所で使う可能性を考えるなら確認する

あると効く付加機能

機能 評価
ライト 停電時にそのまま照明として使える。実用性が高い
スマートフォンへの給電 あると安心だが、手回しでの発電量は小さく実用的な充電にはならない。過度に期待しない
緊急警報放送の自動起動 待機状態から自動で受信を開始する機能。ただし待機に電力を使う
イヤホン端子 避難所など周囲に配慮が必要な場面で使う
時計・アラーム 普段使いしやすくなり、結果として動作確認の機会が増える

手回しでスマートフォンを充電できるとうたう製品がありますが、発電量が小さく、満充電にするような使い方はできません。数分の通話や短時間の点灯を確保するための最終手段と考えてください。充電の備えはモバイルバッテリーで行うのが現実的です。容量の考え方はモバイルバッテリーの選び方とおすすめの容量の目安にまとめています。

備えたあとの点検

防災用品でもっとも多い失敗が、買って置いたまま点検しないことです。

頻度 やること
半年に1回 電源を入れて受信できるか確認する。乾電池の液漏れも見る
半年に1回 備蓄している乾電池の使用推奨期限を確認し、期限が近いものは入れ替える
年に1回 地元のラジオ局の周波数を確認し、本体か紙に控えておく
随時 置き場所を家族全員が知っているか確認する

とくに注意したいのが乾電池の液漏れです。本体に入れたまま長期間放置すると、液漏れで端子が腐食し、いざというときに動かなくなります。備蓄する場合は電池を本体から抜いて別に保管し、使うときに入れる運用にしてください。充電池を内蔵する製品では、半年に1回程度の充電も必要です。

また、周波数を控えておくことも実務的です。停電の暗がりで選局に手間取ることがあります。地元のAM局・FM局・コミュニティFMの周波数を紙に書いて本体に貼っておくと、家族の誰でも使えます。

置き場所の考え方

場所 理由
寝室 夜間の地震で最初に必要になる場所
玄関の避難用具と一緒 持ち出す前提の場合
リビング 普段使いを兼ねる場合。使っていれば故障に気づける

押し入れの奥にしまい込むのが最も避けたい置き方です。普段から目に入る場所に置き、時計やラジオとして日常的に使っていれば、電池切れや故障にも気づけます。備えを「使わないもの」にしないことが、点検を続けるいちばんの方法です。

離れて暮らす家族に備えを持たせる場合は、操作の簡単さを優先してください。見守りの考え方は離れて暮らす親の見守りガジェット10分野を比較 プライバシーの負担まで採点するで扱っています。

よくある失敗と注意点

手回し充電に期待しすぎる

発電量は小さく、スマートフォンの充電には向きません。乾電池を主、手回しを最後の手段と考えてください。

電池を入れたまま長期保管する

液漏れで端子が腐食します。備蓄するなら電池は別に保管してください。

ワイドFM非対応の古いラジオを備えにする

受信周波数が90.0MHz以上に対応しているか確認してください。対応していないとワイドFMを受信できません。

押し入れの奥にしまう

点検の機会が失われます。普段使いできる場所に置いてください。

周波数を覚えていると思い込む

停電の暗がりで選局に手間取ります。地元局の周波数を紙に控えて本体に貼っておいてください。

よくある質問

スマートフォンのラジオアプリでは足りませんか

通信を使うアプリは、回線が混雑したり基地局が停止したりすると使えません。またスマートフォンの電池も消耗します。停電が長引く場面での備えとしては、放送波を直接受信するラジオのほうが確実です。

ワイドFMとは何ですか

AM放送の番組をFM放送用の周波数で流す仕組みです。総務省が推進しており、都市部の受信障害や外国波の混信、地形による難聴への対策と、災害対策の2つが目的とされています。受信周波数が90.0MHz以上に対応した機器で聞けます。2025年にFM放送用の周波数の上限が99.0MHzに広がったため、上限が99.0MHzまでのラジオのほうが今後の選択肢を残せます。

電池は何を備蓄すればよいですか

ラジオが使う種類とサイズに合わせて備蓄してください。他の防災用品(ライトなど)と電池の種類を揃えておくと、融通が利いて管理も楽になります。使用推奨期限を確認し、期限が近いものは日常使いに回してください。

手回しラジオだけで十分ですか

回し続けなければ聞けないため、長時間の情報収集には向きません。乾電池で動く製品を主にして、手回しは電池が尽きたあとの手段と位置づけてください。多くの製品が両方に対応しています。

緊急警報放送の自動起動機能は必要ですか

待機状態から自動で受信を開始する機能ですが、待機に電力を使います。常時電源につないで使う据え置き用途では有効ですが、電池だけで備蓄する場合は消耗の要因になります。使い方に合わせて判断してください。

防滴性能はどのくらい必要ですか

屋内での使用が前提なら不要です。屋外や避難所での使用、雨天時の持ち出しを想定するなら、防滴に対応した製品を選んでください。等級の読み方は防水性能の表示に関する記事が参考になります。

置き場所はどこがよいですか

夜間の地震を考えると寝室、持ち出しを考えると玄関の避難用具と一緒が基本です。普段使いを兼ねてリビングに置く方法もあります。押し入れの奥にしまい込むのは避けてください。

家族が高齢の場合に選ぶポイントは

操作が簡単で、表示が見やすく、音量が確保できる機種を選んでください。ダイヤル式で選局する製品より、周波数を登録できる製品のほうが扱いやすい場合があります。周波数を紙に控えて本体に貼っておくのも有効です。

まとめ

防災用のラジオは、乾電池で動くことを最優先に選んでください。手回しやソーラーは発電量が小さく、長時間の運用を支えるものではありません。電池が尽きたあとの最後の手段として位置づけるのが実際的です。なお、スマートフォン等の充電用にソーラー電源を備えたい場合は、ラジオ本体の発電機能とは別に、専用のソーラーチャージャーを検討したほうが現実的です。ソーラーチャージャーの選び方 パネル単体型とバッテリー内蔵型の違いで扱っています。停電が長引き、ラジオ以外の家電も動かしたい場合は非常用発電機の選び方 インバーター式と燃料の種類、屋内使用の危険性も選択肢になります。もう一つ確認したいのがワイドFMへの対応で、受信周波数が90.0MHz以上に対応しているか、上限が99.0MHzか95.0MHzかを仕様表で見てください。総務省が推進する仕組みで、都市部の受信障害への対策と災害対策の両方の目的があります。そして備えたあとが重要です。半年に1回の動作確認、電池の入れ替え、地元局の周波数を紙に控えておくこと。押し入れの奥にしまい込まず、普段から目に入る場所に置いておけば、点検の機会も自然に生まれます。

出典

総務省が推進するワイドFM(FM補完放送)に関する情報(AM放送エリアにおける難聴対策および災害対策を目的として、AM放送の番組をFM放送用の周波数を用いて放送する仕組み)/千葉県および内閣府の令和元年房総半島台風(2019年台風第15号)に関する記録(停電等による携帯電話基地局の停波、一部市町の防災行政無線の停止)/総務省 電波監理審議会審議資料「無線設備規則及び特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則の一部を改正する省令案等(FM放送用周波数の拡充に係る制度整備)」(令和7年4月10日、FM放送用周波数の上限を95.0MHzから99.0MHzへ引き上げ)、総務省「ワイドFM」および「全国民放FM局・ワイドFM局一覧」(令和7年4月1日現在)

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