セキュリティ・通信

特殊詐欺から家族を守る電話まわりの設定 統計で見る最新の手口と対策

特殊詐欺の被害が、統計の上で過去最悪の水準になっています。警察庁が公表した令和7年の確定値によれば、特殊詐欺の認知件数は27,832件、被害額は1,423.1億円で、いずれも過去最悪を更新しました。被害に遭う入口は電話が約8割です。裏を返せば、電話まわりの設定を見直すことが、もっとも効率のよい対策になります。この記事では統計から現状を確認したうえで、固定電話とスマートフォンそれぞれでできる設定、家族で決めておくことを整理します。

この記事でわかること

警察庁の統計で見る最新の被害状況と手口/年代によって狙われる電話が違うという事実/固定電話でできる5つの対策/スマートフォンでできる対策/ニセ警察詐欺の見分け方/家族で決めておく取り決めと相談先

統計で見る現在の状況

まず数字で全体像を把握します。以下は警察庁が公表した令和7年の確定値(令和8年6月5日掲載)です。

項目 令和7年 前年比
特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数(総数) 43,000件 +11,720件(+37.5%)
同 被害額(総額) 3,257.4億円 +1,266.7億円(+63.6%)
うち特殊詐欺の認知件数 27,832件 +6,789件(+32.3%)
うち特殊詐欺の被害額 1,423.1億円 +704.3億円(+98.0%)

特殊詐欺の認知件数27,832件は、これまで最悪だった平成16年の25,667件を上回りました。被害額1,423.1億円も、前年の718.8億円のほぼ2倍です。既遂1件あたりの被害額も令和6年の350.3万円から令和7年は523.6万円に増えています。

増加の主因はニセ警察詐欺

警察庁は増加の主な要因として、警察官等をかたり捜査名目で現金等をだまし取る手口(ニセ警察詐欺)による被害の増加を挙げています。

手口 認知件数 被害額
オレオレ詐欺(全体) 14,489件 1,138.1億円
うちニセ警察詐欺(オレオレ詐欺に含まれる分) 10,859件 公開情報では確認できなかった
ニセ警察詐欺(全体) 11,014件 1,005.0億円

ニセ警察詐欺は令和7年1月から統計が開始された区分です。オレオレ詐欺の認知件数の約75%を占めており、この手口が全体を押し上げている構図が分かります。

注目すべきは被害者の年代です。警察庁の資料によれば、ニセ警察詐欺の認知件数では全体のうち30代が最多、次いで20代で、被害は幅広い年代にわたっています。一方、被害額では70代が最多、次いで60代で、高齢者の既遂1件あたりの被害額が高いという特徴があります。オレオレ詐欺では20代が1,759件(+361.7%)、30代が2,284件(+1,752件、+329.3%)と大きく増えており、「高齢者だけの問題」という前提はすでに成り立ちません。

入口は電話が約8割

最初に接触してくる手段(当初接触ツール)は電話が78.8%(前年比-0.2ポイント)で約8割を占め、メール・メッセージは13.8%(+3.8ポイント)に増えています。ここから、年代によって狙われる電話の種類が違うことも分かります。

年代 被害が多い電話
20代〜50代 携帯電話による被害が多い
60代以上 固定電話での被害が多い
手口 使われる電話の傾向
オレオレ詐欺 固定電話・携帯電話ともに多い(固定電話では全体の約5割、携帯電話では全体の約8割)
還付金詐欺 大半が固定電話
架空料金請求詐欺 大半が携帯電話

この違いは対策の設計に直結します。高齢の家族には固定電話の設定を、若い世代には携帯電話の設定を優先するという考え方になります。

予兆電話と国際電話番号の急増

もうひとつ押さえておきたい数字があります。警察が把握した予兆電話(相手の住所や氏名、資産、利用金融機関などを探る、特殊詐欺が疑われる電話)は令和7年に331,653件で、前年比138,178件増(+71.4%)でした。

また、犯行に利用された電話番号のうち国際電話番号は92,996件で、前年比45,400件増(+95.4%)と倍近くに増えています。見慣れない国際電話番号からの着信が増えている背景には、この事情があります。

令和8年上半期の暫定値(7月30日公表)で見えた変化

警察庁は令和8年7月30日に、令和8年上半期(1月から6月)の暫定値を公表しました。読む前に一つ注意があります。令和8年から集計の区分が変わり、ニセ警察詐欺が独立した手口になり、SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺も「特殊詐欺」の一手口に含めて数えるようになりました。このため、令和8年の「特殊詐欺」の数字は、上の表にある令和7年の特殊詐欺27,832件とそのままは比べられません。前年同期比は、警察庁が新しい区分にそろえて計算した値です。

令和8年上半期の特殊詐欺の手口別被害額
図 令和8年上半期の手口別被害額(警察庁の暫定値をもとにガジェット広場作成)
項目(令和8年上半期・暫定値) 数値 前年同期比
特殊詐欺(新区分)の認知件数 22,031件 +3,408件(+18.3%)
同 被害額 1,816.2億円 +618.8億円(+51.7%)
1日当たりの被害額 10.0億円 +3.4億円
既遂1件当たりの被害額 840.0万円 +184.4万円
ニセ警察詐欺の認知件数 4,466件 -296件(-6.2%)
ニセ警察詐欺の被害額 507.9億円 +108.9億円(+27.3%)
SNS型投資詐欺の被害額 797.9億円 +444.9億円(+126.0%)
高齢者(65歳以上)の認知件数 9,230件(法人を除く全体の42.2%) +1,186件(+14.7%)
予兆電話の件数 119,778件 -44,430件(-27.1%)

ニセ警察詐欺は件数が少し減った一方で、被害額は27.3%増えています。警察庁の資料では、ニセ警察詐欺の既遂1件当たりの被害額は1,163.9万円です。1回だまされたときの金額が大きくなっている、と読めます。

電話との関係もはっきり出ています。ニセ警察詐欺のうち、最初の接触が電話だったものは認知件数の98.2%でした。その電話のうち携帯電話は58.8%で、前年同期より10.5ポイント下がっています。年代別の認知件数は70代が869件で最も多く、60代666件、30代664件、50代580件と続きます。前年同期に904件だった20代は550件に減りましたが、30代以下の被害が残っていることに変わりはありません。

対策の面では、警察庁が国際電話や詐欺電話を遮断する機能などの基準を満たすスマートフォン用アプリを「警察庁推奨アプリ」として認定する制度を始めています。令和8年3月に第1弾として2つのアプリが認定され、6月末時点の累計ダウンロード数は約147.6万件です。

出典 警察庁「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」令和8年7月30日公表(https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2026.pdf)。数値は暫定値で、年間の確定値で変わることがあります。2026年10月4日にPDF本文で確認。同日付の訂正資料(teisei_sagi2026.pdf)は対策ページの名称と表現の訂正で、上の数値は対象外です。

固定電話でできる5つの対策

60代以上の被害は固定電話が中心です。実家の電話には、次の対策が効きます。

対策 内容 費用の目安
常時留守番電話に設定する 在宅時も留守番電話にし、用件を確認してからかけ直す。相手が名乗らない電話には出ない状態を作る 無料(機能があれば)
ナンバーディスプレイを契約する 着信時に相手の番号が表示される。番号を確認してから出る運用にできる 月額数百円
通話録音の警告機能を使う 着信時に「この通話は録音されます」と自動で流す機能。録音を嫌う相手は切る 機器で数千円から
迷惑電話対策機能付きの電話機に買い替える 迷惑電話の番号を判定して警告や自動拒否を行う製品がある 1万〜3万円
国際電話の利用を休止する 国際電話を使う予定がない固定電話では、発着信を休止する手続きが用意されている 手続きは無料

とくに効果が大きいのは、1つ目の常時留守番電話です。相手と会話をしなければ、だまされる余地はありません。用件のある相手はメッセージを残すので、必要な連絡を取り逃すこともありません。

国際電話番号を使った犯行が倍近くに増えている状況を踏まえると、国際電話を使う予定がない家庭では利用休止の手続きを検討する価値があります。固定電話・ひかり電話については、警察庁の資料で「国際電話不取扱受付センター」に申し込むと国際電話番号からの発着信を無償で休止できると案内されています。携帯電話では、国際電話の着信規制ができる警察庁推奨の無料アプリで着信を遮断できます。手続きの窓口や条件は契約している事業者によって異なるため、まずは契約先に問い合わせてください。自治体によっては、迷惑電話対策機器の購入費用に助成を設けている場合もあります。

スマートフォンでできる対策

20代から50代の被害は携帯電話が中心です。次の設定を確認してください。

対策 内容
迷惑電話フィルタの機能を使う 通信事業者が提供するサービスや端末の標準機能で、迷惑電話の疑いがある着信を警告・拒否できる
知らない番号は折り返す運用にする 着信にすぐ出ず、番号を検索するか、公式に案内されている番号にかけ直す
SMSのフィルタを有効にする 不審なSMSを振り分ける機能がある。架空料金請求詐欺は携帯電話が中心で、SMSからの誘導も多い
公式アプリとブックマークから確認する 宅配便や金融機関を装うSMSのリンクは開かず、公式アプリで状況を確認する
キャリア決済と電子マネーの上限を見直す だまされて操作してしまった場合の被害額を抑える

SMSやメール等を当初接触ツールとする被害も大幅に増加しています。届いたメッセージのリンクから開かないという原則は、この分野でも同じです。決済手段の管理はスマホ決済アプリ(電子マネー)の選び方比較、家庭全体のセキュリティ対策の進め方は家庭のセキュリティ対策 10大脅威2026を30分・今週・習慣の3段階に置き換えるにまとめています。

ニセ警察詐欺の見分け方

統計上もっとも件数の多い手口です。警察官を名乗り、捜査を理由に現金や暗号資産を要求してくるものです。判断の基準を持っておけば、その場で見抜けます。

詐欺に共通する要素 本来どうなのか
電話で「あなたの口座が犯罪に使われている」と告げる 捜査の連絡を電話だけで完結させ、現金の移動を求めることはない
ビデオ通話で警察手帳や逮捕状のような画像を見せる 画像は容易に偽造できる。本物かどうかは画面では判断できない
「他言しないように」と口止めする 家族や周囲への相談を封じることが手口の一部になっている
指定の口座への振込や暗号資産の送信を求める 捜査機関が個人に送金や暗号資産の送信を求めることはない
SNSのメッセージアプリでのやり取りに誘導する 公的機関が個人とその形で連絡を取ることは想定されていない

迷ったときの確認方法は決まっています。いったん電話を切り、自分で調べた警察署の代表番号にかけ直してください。相手が伝えてきた番号にかけ直しても意味がありません。警察相談専用電話#9110でも相談できます。被害金の交付形態では振込型が約6割を占め、暗号資産送信型の増加が顕著だと警察庁は指摘しています。お金を動かす操作を求められた時点で、いったん止まることです。

家族で決めておくこと

機器の設定と同じくらい効くのが、事前の取り決めです。

決めておくこと ねらい
お金の話は必ず折り返す 電話を切って自分から発信し直す習慣をつくる
家族だけが知っている確認事項を決めておく 本人かどうかを確かめる材料にする
どんな内容でも家族に一度話す 「他言しないように」という指示に従わない前提を共有する
公的機関を名乗る電話は疑ってよいと合意しておく 疑うことに罪悪感を持たせない
相談先の番号を電話機の近くに貼る その場で確認できる状態にする

離れて暮らす家族の見守りについては、機器を使った方法もあります。選び方は離れて暮らす親の見守りガジェット10分野を比較 プライバシーの負担まで採点する、端末そのものの選び方はシニア向けスマホの選び方、家族が確認すべきポイントにまとめました。子ども世代の被害も増えているため、家庭内で世代を問わず共有しておくことが有効です。

相談先

状況 連絡先
いま被害に遭っている、犯人が家に来る予定がある 110番
不審な電話を受けた、判断に迷う 警察相談専用電話 #9110
金銭を支払ってしまった、契約に関するトラブル 消費者ホットライン 188
振り込んでしまった 振込先の金融機関と自分の取引金融機関に速やかに連絡する

振込型が被害金交付形態の約6割を占めることを踏まえると、振り込んでしまった直後の連絡は特に重要です。金融機関への連絡が早いほど、口座凍結などの対応が間に合う可能性があります。

よくある失敗と注意点

「自分は大丈夫」と考える

令和7年のオレオレ詐欺では、20代が1,759件(+361.7%)、30代が2,284件(+329.3%)と大きく増えています。ニセ警察詐欺では認知件数の最多が30代です。年齢を理由に対策を省略できる状況ではありません。

相手が伝えてきた番号にかけ直す

確認したことになりません。自分で調べた公式の番号にかけ直してください。

留守番電話の設定を「在宅時は解除」にする

常時設定してこそ効果があります。在宅中に鳴った電話に出てしまうことが入口になります。

実家の電話機だけ対策して、本人のスマートフォンを見落とす

高齢者もスマートフォンを使う時代です。固定電話とスマートフォンの両方を確認してください。

被害に気づいても家族に言えない

口止めは手口の一部です。恥ずかしいと感じる内容ほど、早く相談したほうが被害は小さく収まります。

よくある質問

今すぐできる対策を1つ挙げるとしたら何ですか

固定電話を常時留守番電話に設定することです。費用がかからず、相手と会話しない状態を作れます。スマートフォンであれば、知らない番号には出ずに折り返す運用に切り替えることです。

迷惑電話対策機能付きの電話機は効果がありますか

着信時に録音の警告を流す、迷惑電話と判定した番号を拒否するといった機能があり、会話が始まる前に切れる可能性を高められます。自治体によっては購入費用の助成を設けている場合があるため、確認してみてください。

国際電話番号からの着信が増えました

警察庁の統計では、犯行に利用された国際電話番号が令和7年に92,996件と前年比で倍近くに増えています。国際電話を使う予定がない固定電話であれば、利用を休止する手続きを検討してください。窓口や条件は契約先に確認します。

警察を名乗る電話が本物かどうか確かめる方法はありますか

いったん電話を切り、自分で調べた警察署の代表番号にかけ直してください。相手が伝えた番号にかけても確認にはなりません。捜査を理由に現金の移動や暗号資産の送信を求めることはありません。

ビデオ通話で警察手帳を見せられました

画像は容易に偽造できます。画面で見せられたものを根拠に判断しないでください。ニセ警察詐欺は令和7年の統計でオレオレ詐欺の約75%を占める手口です。

高齢の親が対策を嫌がります

詐欺の話としてではなく、「知らない番号に出なくて済む設定」として提案すると受け入れられやすくなります。留守番電話やナンバーディスプレイは、詐欺対策という文脈を出さずに導入できる設定です。

SMSで身に覚えのない請求が届きました

リンクを開かず、記載された番号にも電話しないでください。架空料金請求詐欺は携帯電話が中心の手口です。判断に迷う場合は警察相談専用電話#9110か消費者ホットライン188に相談してください。

振り込んでしまいました

すぐに振込先の金融機関と自分の取引金融機関に連絡し、あわせて警察に届け出てください。時間の経過とともに対応できる範囲は狭まります。

まとめ

警察庁の令和7年確定値では、特殊詐欺の認知件数27,832件・被害額1,423.1億円といずれも過去最悪となり、増加の主因はニセ警察詐欺でした。被害の入口は電話が約8割を占め、60代以上は固定電話、20代から50代は携帯電話という違いがあります。対策はこの違いに合わせて設計してください。固定電話なら常時留守番電話とナンバーディスプレイ、国際電話の利用休止。スマートフォンなら迷惑電話フィルタと、知らない番号は折り返すという運用です。そして、電話を切って自分で調べた番号にかけ直すという習慣が、あらゆる手口に共通して効きます。オレオレ詐欺で20代・30代の被害が大きく増えている以上、これは高齢の家族だけの話ではありません。家庭内で世代を問わず共有してください。

出典

警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(認知件数総数43,000件・被害額総額3,257.4億円、うち特殊詐欺27,832件・1,423.1億円でいずれも過去最悪、既遂1件当たりの被害額523.6万円、オレオレ詐欺14,489件・1,138.1億円のうちニセ警察詐欺10,859件、当初接触ツールは電話が約8割、予兆電話331,653件、犯行利用の国際電話番号92,996件、被害金交付形態は振込型が約6割。令和8年6月5日掲載、https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/260605/01.html )/警察庁「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」(令和8年7月30日公表、令和8年から区分を変更しニセ警察詐欺を独立した手口に、SNS型投資・ロマンス詐欺を特殊詐欺に含めて集計。特殊詐欺22,031件・1,816.2億円、ニセ警察詐欺4,466件・507.9億円、予兆電話119,778件、警察庁推奨アプリの累計ダウンロード約147.6万件、https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2026.pdf 、2026年10月4日確認)/警察相談専用電話#9110/消費者ホットライン188

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