スマートフォンの通信方式には4Gと5Gがあり、どちらを重視して選べばよいか迷う方も多いはずです。「5Gと4Gの違い」と聞くと通信速度の差をまず思い浮かべがちですが、実際には対応エリアの広さや電波の届き方、周波数帯の使い分けまで理解しておくと選び方を誤りにくくなります。結論から言うと、動画視聴やオンライン会議など大容量通信を頻繁に行う人は5G対応エリアの確認を前提に5Gを選ぶ価値があり、通話とメッセージ中心の使い方なら4Gでも十分に快適です。この記事では4Gと5Gの技術的な違いから、周波数帯による分類、エリアの実態、選び方の基準、よくある疑問までを整理します。
4Gと5Gの基本的な定義
4G(第4世代移動通信システム)は、国際標準化団体3GPPが策定したLTE-Advancedなどの規格をもとに構築された通信方式で、日本を含む世界各国で長年主流として使われてきました。全国的にエリア整備が進んでおり、通話やデータ通信の基盤として安定した実績があります。
5G(第5世代移動通信システム)は、国際電気通信連合の無線通信部門(ITU-R)が「IMT-2020」として要件を定め、3GPPが技術仕様「5G NR(New Radio)」として策定した次世代の通信規格です。3GPPは「Release 15」を最初の完全な5G規格と位置づけ、2018年に完成させる作業を進めました。初期の仕様は4GのLTEネットワークと組み合わせる方式(NSA)が先行し、Release 15で5G単独の方式(SA)まで範囲が広がっています。Release 15は2018年6月に機能が凍結され、2019年9月までに仕様が出そろいました。以降のリリースでも機能拡張が続いています。高速大容量通信に加えて、低遅延通信や多数の機器を同時につなぐ通信といった、複数の利用シーンを想定して設計されている点が4Gとの大きな違いです。
5Gの技術的な特徴
ITU-RはIMT-2020の利用シナリオとして、大きく3つの方向性を示しています。それぞれの特徴を理解すると、5Gが単に速いだけの通信方式ではないことが分かります。
高速大容量通信(eMBB)
動画配信サービスの高画質視聴や大容量ファイルの送受信など、データ量の多い通信を快適に行うための特性です。ITU-Rの報告書(Report ITU-R M.2410)では、IMT-2020の最低要件としてピーク速度が下り20Gbps・上り10Gbpsと定められています。ピーク速度は理想的な条件で1台の端末が出せる最大値という位置づけで、これはあくまで規格上の要件です。実際の通信速度は基地局の整備状況や電波状況、利用者数などによって変動します。
低遅延通信(URLLC)
操作の指示から反応までのタイムラグを極力小さくする特性で、遠隔操作や自動運転支援といった分野での活用が想定されています。同じ報告書では、無線区間の遅延(ユーザープレーン遅延)の最低要件が低遅延用途(URLLC)で1ミリ秒、高速大容量用途(eMBB)で4ミリ秒とされています。いずれも利用者が1人だけの無負荷状態を前提にした値です。一般的なスマホ利用では体感する場面は限られますが、オンラインゲームやビデオ通話の応答性向上には寄与します。
多数同時接続(mMTC)
センサーやIoT機器など、多数の端末を同時にネットワークへつなぐための特性です。スマートフォン単体の利用では意識しにくいですが、街中のインフラや工場設備など、社会全体の通信基盤として5Gが位置づけられている理由の一つです。IMT-2020の最低要件では、接続密度として1平方キロメートルあたり100万台が示されています。
IMT-2020の主な要件値
ここまでに触れた数値をReport ITU-R M.2410から整理すると、次のとおりです。いずれも規格として満たすべき要件の値であり、スマホで実際に出る通信速度ではありません。
| 項目 | 最低要件の値 | 補足 |
|---|---|---|
| ピーク速度 | 下り20Gbps/上り10Gbps | 理想的な条件で1台の端末が出せる最大値 |
| ユーザー体感速度 | 下り100Mbps/上り50Mbps | 人が密集する都市部(Dense Urban)の評価環境での目標値 |
| 遅延(ユーザープレーン) | eMBB 4ミリ秒/URLLC 1ミリ秒 | 利用者1人の無負荷状態が前提 |
| 接続密度 | 100万台/km² | 多数同時接続(mMTC)の要件 |
ピーク速度とユーザー体感速度の間には200倍の開きがあります。広告などで目にする「最大◯Gbps」は前者にあたる考え方で、混雑した環境での実感に近いのは後者の指標です。
4Gと5Gの違い(比較表)
| 項目 | 4G | 5G |
|---|---|---|
| 標準化団体 | 3GPP(LTE-Advanced等) | 3GPP(5G NR)、要件はITU-RのIMT-2020 |
| 通信の方向性 | 音声・データ通信を安定して提供 | 高速大容量・低遅延・多数同時接続を想定 |
| エリアの広さ | 全国的に広く整備済み | 都市部を中心に拡大中で地域差がある |
| 屋内・地下での通信 | 比較的安定して届く | 電波が障害物に弱く、5Gから4Gへ切り替わりやすい |
| ネットワーク構成 | 単独のネットワーク(4Gのみ) | NSA(4G基盤併用)とSA(5G単独)の2方式があり、運用は事業者・エリアで異なる |
4Gは全国的にエリアが整備されており、屋内や郊外でも安定して通信できる点が強みです。一方5Gは対応エリアで大容量データのやり取りが快適になりますが、エリアはまだ地域差があり、屋内では4Gに切り替わる場面も珍しくありません。
5Gの周波数帯による分類
5Gには複数の周波数帯があり、それぞれ電波の届き方や用途が異なります。日本国内では総務省の周波数割り当てにより、3.7GHz帯・4.5GHz帯を中心としたSub6と、28GHz帯を用いるミリ波が5G用に整備されています。周波数帯によって「届きやすさ」と「速さ」はトレードオフになっている点を押さえると、エリア表示だけでは分からない通信品質の違いを理解しやすくなります。
| 周波数帯 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| Sub6(6GHz以下) | 4Gに近い距離まで電波が届き、エリアを広げやすい | 日常的なスマートフォン利用の主力 |
| ミリ波(28GHz帯) | 非常に高速だが電波の届く距離が短く、障害物にも弱い | スタジアムや駅など人が密集する施設での活用 |
現在、実用エリアの多くを占めているのはSub6です。4Gに近い感覚でエリアを拡大しやすく、屋外での利用であれば比較的安定して5G通信を受けられます。ミリ波は非常に高速な反面、電波の届く範囲が狭いため、不特定多数が集まる施設など特定用途での活用が中心です。既存の4G向け周波数帯を5Gと動的に共有する技術(ダイナミック・スペクトラム・シェアリング)の導入も各国で進んでいます。
5Gエリアの実態をどう捉えるか
通信事業者各社は人口カバー率などの数値を公表していますが、算出方法や基準は事業者ごとに異なり、実際に自分が生活する場所で快適に5Gを使えるかどうかとは必ずしも一致しません。公表されているカバー率の数値だけで5Gの実感度を判断するのは避け、通信事業者の公式エリアマップで自宅や職場など実際に使う場所の対応状況を確認するのが実践的です。
総務省が公表している5Gの整備状況
各社のエリアマップとは別に、総務省は携帯電話事業者(NTTドコモ、KDDI/沖縄セルラー電話、ソフトバンク、楽天モバイル)からの報告をもとに、5Gの整備状況を年度末ごとに公表しています。令和8年7月27日に公表された令和7年度末(2026年3月末)の数字は、次のとおりです。
| 項目 | 令和7年度末(2026年3月末) |
|---|---|
| 全国の5G人口カバー率 | 98.6%(2025年3月末は98.4%) |
| 都道府県別の5G人口カバー率 | 89.2%〜99.9% |
| 整備目標(デジタルインフラ整備計画2030、令和7年6月策定) | 全国・各都道府県とも2030年度末に99% |
この全国値は、携帯キャリア4者のエリアカバーを重ね合わせた数字と注記されています。つまり、どれか1社が5Gを提供している人口の割合であり、自分が契約している1社の5Gが自宅で使える割合を示すものではありません。また、都道府県別では最高と最低で約10ポイントの差があります。全国の98.6%という数値だけを見て、どの地域でも同じように5Gがつながると受け取るのは早計です。
人口カバー率は、その地域の人口のうち5Gの電波が届く範囲に住む人の割合を示す指標です。個々の建物の中や、山間部・地下などの通信品質までを示す数字ではないため、契約前には、各社が公開しているエリアマップで、自宅と勤務先、よく行く場所を地図上で確かめておくと安心です。5G対応のスマートフォンでも、エリア外では4Gで通信するため、数字の高さと体感の速さは必ずしも一致しません。
5G対応端末でも4G通信になる場面
5G対応端末を持っていても、通信は状況に応じて自動的に4Gへ切り替わります。次のような状況では、5Gエリア内でも4Gでの通信が中心になることがあります。
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| 5G非対応エリアにいる | 基地局が整備されていない地域では自動的に4Gに切り替わる |
| 建物内・地下にいる | 5Gの電波は障害物に弱く、屋内で減衰しやすい |
| 回線が混雑している | 状況によっては安定した4Gへ自動で切り替わることがある |
5G対応機種に買い替えたからといって、常に5G通信の恩恵を受けられるわけではありません。この仕組みを理解しておくと、機種変更後に「思ったより5Gを実感できない」と感じたときの原因を把握しやすくなります。多くの端末は画面上部のステータスバーに通信方式のアイコンを表示するため、日常的に確認できます。
自分に合った選び方の基準
4Gと5Gのどちらを重視するかは、利用シーン・居住エリア・料金プラン・対応端末という4つの観点から検討すると判断しやすくなります。
利用シーンで選ぶ
動画のダウンロードやオンライン会議、大容量ファイルのやり取りを頻繁に行う人は、5G対応エリアが自宅や職場に整っているかを確認したうえで5G対応機種や料金プランを選ぶ価値があります。通話とメッセージ中心の使い方であれば、4Gでも快適に利用でき無理に5Gにこだわる必要は薄れます。
次のような使い方が中心の人は、無理に5G対応機種へ買い替えなくても4Gで困らない場合が多いとされています。
- 電話やメッセージアプリでのやり取りが中心
- SNSの閲覧やニュースチェックなど、軽めのデータ通信が多い
- 自宅や職場は主にWi-Fi環境で通信している
- 動画視聴も標準画質程度で十分
居住エリアの対応状況で選ぶ
5G対応プランに加入しても、生活圏のエリア対応が進んでいなければ恩恵を実感しにくくなります。契約前に通信事業者の公式サイトで自宅や職場周辺のエリア対応状況を確認しておくと安心です。
料金プランで選ぶ
5G対応プランは通信事業者によって月額料金やデータ容量の設定が異なります。エリア対応状況を確認せずに契約すると、恩恵を実感できないまま料金だけが上がることもあります。同一料金で5Gにも対応するプランも増えており、比較する価値があります。
対応端末で選ぶ
機種変更を検討している場合は、現在使っている端末や購入予定のモデルが5Gに対応しているか、また対応している周波数帯が自分の通信事業者に適合しているかも判断材料になります。周波数帯への対応状況は機種ごとに細かく異なるため、購入前に忘れずに確認しておきましょう。海外向けモデルを個人輸入する場合は、日本国内の周波数帯に対応していないことがあるため注意が必要です。
テザリング・在宅ワークでの活用で選ぶ
5Gの高速通信は、スマホ単体の利用だけでなく、テザリング機能でパソコンやタブレットに接続する際にも効果を発揮しやすい場面です。自宅の固定回線が不安定な地域や、外出先で一時的に安定した通信環境を確保したい場合、5G対応エリアであれば大容量のファイル送受信やビデオ会議も行いやすくなります。固定回線の代わりに5Gを主回線として使う、いわゆるホームルーター的な使い方をする世帯も増えています。
今後の5Gエリア拡大の見通し
通信事業者は年々5Gの基地局整備を進めており、対応エリアは着実に拡大しています。とはいえ地方や郊外では4Gが通信の中心となる期間がまだしばらく続くと見込まれており、居住地域によって5Gの実感度には差が生じ続けると考えられます。将来的な引っ越しや生活圏の変化も見据えて、現時点でのエリア状況だけでなく、通信事業者が公表している今後の整備計画も参考にしながら判断するとよいでしょう。総務省は電波の有効利用を目的とした周波数の再編・割り当て政策を継続的に進めており、5G基地局の整備を後押しする制度面の動きも続いています。
よくある質問
5G対応機種を買えば必ず速くなりますか。
実際の速度はエリアの対応状況や周辺の混雑状況に左右され、5G対応エリア外では通常の4G通信になります。
5Gと4Gでバッテリー消費に違いはありますか。
5G通信は処理負荷が高く、4Gに比べ消費がやや大きくなる傾向があるとされています。長時間の外出時はモバイルバッテリーがあると安心です。
ミリ波対応の端末は日常生活で必要ですか。
ミリ波は駅やスタジアムなど人が密集する施設での活用が中心の特殊な周波数帯のため、一般的な日常利用ではSub6対応で十分な場合がほとんどです。
5G契約は4Gより必ず高くなりますか。
通信事業者やプランによって異なります。同一料金で5Gにも対応しているプランも増えているため、契約内容を確認するとよいでしょう。
4G専用の端末を使い続けても問題ありませんか。
4Gのサービス自体は当面継続される見込みですが、将来的な通信規格の移行を見据えると、次の機種変更のタイミングで5G対応機種を検討する価値はあります。
5GのSAとNSAという言葉を見かけますが何が違いますか。
NSA(ノンスタンドアローン)は4Gのネットワーク基盤を併用して5Gの電波を提供する方式、SA(スタンドアローン)は5G単独でネットワークを構成する方式です。3GPPの仕様として両方式が定義されており、どちらで運用されているかは通信事業者やエリアによって異なります。3GPPの解説では、NSAで提供されるのは4Gのサービスで、5Gの電波による低遅延などの恩恵を受ける形とされています。5Gとして定義されたサービス一式を使えるのはSAの構成だけです。
5Gに買い替えるべきタイミングはいつですか。
決まった時期はありませんが、現在の端末が寿命に近づいたタイミングや、生活圏の5Gエリアが整ってきたタイミングで検討すると無理のない移行がしやすくなります。
まとめ
5Gは高速大容量通信に加えて低遅延通信や多数同時接続といった特性を持つ、4Gの次を担う通信規格です。ただし、その効果を実感できるかどうかはエリア対応状況と利用スタイルに大きく左右されます。周波数帯の違いや料金プランの内容も踏まえたうえで、利用シーン・居住エリア・料金プラン・対応端末という4つの基準から自分の生活圏に合った選択をすることが大切です。
自宅の回線としてどれを選ぶかという観点は自宅のネット回線の選び方 光回線・ホームルーター・テザリングを比較するで整理しています。
出典・参考情報
総務省による5G用周波数の割り当て。3.7GHz帯・4.5GHz帯を中心としたSub6と、28GHz帯を用いるミリ波が5G用に整備されています/電気通信事業法および総務省が公表する電気通信事業分野の政策情報/各事業者のエリア展開状況、対応バンド、料金プランは事業者ごとに異なり随時変更されます。契約前に各社の公式なエリアマップと案内を確認してください/通信速度の表記は規格上の理論値や実験環境での値であることが多く、実際の速度は場所、時間帯、接続台数、端末の対応バンドによって変わります。本記事は仕組みの一般的な整理であり、実測値ではありません。/総務省 報道資料「5Gの整備状況(令和7年度末)の公表」(令和8年7月27日)および別紙「5Gの整備状況(令和7年度末(2025年度末))」。全国と都道府県別の5G人口カバー率、携帯キャリア4者の重ね合わせであること、2030年度末の整備目標を参照しました。/Report ITU-R M.2410-0(2017年11月)「Minimum requirements related to technical performance for IMT-2020 radio interface(s)」。ピーク速度、ユーザー体感速度、遅延、接続密度の最低要件を参照しました。/Recommendation ITU-R M.2083-0(2015年9月)。5Gの3つの利用シナリオを参照しました。/3GPP「Release 15」「5G System Overview」。Release 15の位置づけとNSA・SAの違いを参照しました。
