スマートフォンのスペック表で「90Hz」「120Hz」といった数値を見て、結局何が変わるのか分からないまま機種選びをしている人は少なくありません。リフレッシュレートとは画面が1秒間に何回描き替わるかを示す数値で、数値が高いほど画面のスクロールやアニメーションが滑らかに見えます。ただし数値が高い機種が常にバッテリー持ちで不利になるわけではなく、可変リフレッシュレート技術の有無によって事情は大きく変わります。この記事では基本的な定義から、可変リフレッシュレートやタッチサンプリングレートとの違い、数値帯ごとの比較、誤解されやすいポイント、機種選びの実践的な基準までをまとめて整理します。
リフレッシュレートの基本的な意味
リフレッシュレートとは、ディスプレイが1秒間に何回画面を描き替えるかを表す数値で、単位はヘルツ(Hz)です。60Hzであれば1秒間に60回、120Hzであれば1秒間に120回、画面の表示内容が更新されることを意味します。数値が高くなるほど描き替えの間隔が短くなり、指の動きに映像が追従している感覚が強くなります。かつては60Hzが主流でしたが、2020年代以降は90Hzや120Hzに対応するモデルが中位機種にも広がり、ゲーミングスマホでは120Hzを超える数値を掲げる製品もあります。たとえばASUSのROG Phone 9 Proは、公式仕様で通常時1〜120Hzの可変とし、設定で最大165Hz、ゲーム向け機能のGame Genie使用時は185Hzまで設定できるとしています。
この分野の規格を扱う団体の一つがVESA(Video Electronics Standards Association、ビデオ・エレクトロニクス・スタンダーズ・アソシエーション)です。VESAは可変リフレッシュレートに関する仕様「Adaptive-Sync」を策定しており、もともとはパソコン用ディスプレイの分野で普及した技術ですが、考え方はスマートフォンの可変リフレッシュレート機能にも通じています。なお個々のスマートフォンがどの規格に準拠しているかはメーカーの公式スペックページで確認するのが確実で、カタログに具体的な準拠規格の記載がない機種も存在します。
リフレッシュレートの特徴を分解する
可変リフレッシュレート(VRR)とは
可変リフレッシュレート(VRR、Variable Refresh Rate)とは、表示内容に応じてリフレッシュレートの数値を自動で切り替える仕組みです。文字を表示したまま動きのない画面では数値を落とし、動画再生やゲームなど動きの多い場面では120Hzといった高い数値まで引き上げます。どこまで下げられるかは機種によって違い、Pixel 10 ProやROG Phone 9 Proは公式仕様で下限を1Hzとしています。iPhoneのProMotionは仕様欄の表記が「最大120Hz」の可変で、下限の数値は書かれていません。代表的な実装がLTPO(Low Temperature Polycrystalline Oxide、低温多結晶酸化物)というバックプレーン技術で、上位モデルの有機ELパネルを中心に採用が進んでいます。可変リフレッシュレートは「常に高い数値で動く」ものではなく、「必要な場面だけ数値を上げる」仕組みである点が、固定リフレッシュレートとの大きな違いです。
タッチサンプリングレートとの違い
リフレッシュレートと混同されやすい指標に、タッチサンプリングレートがあります。リフレッシュレートは画面が1秒間に何回描き替わるかという表示側の数値であるのに対し、タッチサンプリングレートはタッチパネルが1秒間に指の動きを何回検知するかという入力側の数値です。単位はどちらもHzですが、指す対象は別物です。対戦ゲームなど反応速度が重視される場面では、表示の滑らかさだけでなく入力の検知頻度も操作感に影響するため、両方の仕様を確認しておくと機種ごとの違いをより正確に把握できます。メーカーによってはリフレッシュレートのみを大きく表示し、タッチサンプリングレートを注記程度にとどめている場合もあるため、両方の数値を別々に確認する必要があります。
バッテリー消費との関係
リフレッシュレートを高く保つほど画面の描き替え回数が増えるため、消費電力が大きくなる傾向があること自体は事実です。しかし固定式のリフレッシュレートを採用した機種と、可変リフレッシュレートに対応した機種とでは、同じ最大数値であっても実際の電力消費は異なります。可変式の機種は静止画表示中に数値を自動で下げるため、常に高い数値で描き替え続ける固定式の機種に比べて電力消費を抑えやすい設計になっています。バッテリー消費への影響度は機種のチップ性能やソフトウェアの最適化にも左右されるため、公式に公表された具体的な消費電力の数値がない限り、機種間で単純に比較することは難しい点に注意が必要です。
リフレッシュレートの分類・種類
リフレッシュレートの仕組みは、大きく「固定式」と「可変式」に分けられます。それぞれの特徴は次の表のとおりです。
| 方式 | 仕組み | 特徴 |
|---|---|---|
| 固定リフレッシュレート | 常に一定の数値で画面を描き替える | 構造がシンプルで低価格帯の機種に多い。表示内容によらず消費電力はほぼ一定 |
| 可変リフレッシュレート(LTPO方式など) | 表示内容に応じて数値を自動で切り替える。下限と上限は機種ごとに異なり、Pixel 10 Proは1〜120Hz | 滑らかさと省電力を両立しやすいが、対応するパネルはコストが高くなりやすい |
同じ「120Hz対応」でも、下限の数値やゲーム時の上限は機種によって違います。公式の仕様表に書かれている値を並べると次のとおりです(いずれもカタログ値です)。
| 機種 | 仕様表の表記 | リフレッシュレート |
|---|---|---|
| Google Pixel 10 Pro | LTPO OLED、スムーズ ディスプレイ | 1〜120Hz |
| Google Pixel 9a | pOLED、スムーズ ディスプレイ | 60〜120Hz |
| ASUS ROG Phone 9 Pro | LTPO(可変リフレッシュレート) | 1〜120Hz。設定で最大165Hz、Game Genie使用時は185Hz。Always-On display時は1Hz |
同じGoogleの「スムーズ ディスプレイ」でも、Pixel 10 Proは1Hzまで下がるのに対し、Pixel 9aの下限は60Hzです。仕様表を見るときは上限だけでなく、括弧内の下限の数値も確かめると違いが分かります。
また、採用しているパネルの種類によっても、可変リフレッシュレートとの相性は変わります。
| パネルの種類 | 可変リフレッシュレートとの相性 |
|---|---|
| 有機EL(OLED) | 画素ごとに発光を制御できるため低い数値にも対応しやすく、省電力効果を得やすい |
| 液晶(LCD) | バックライトの仕組み上、低いリフレッシュレートでの表示に制約がある場合がある |
数値帯ごとのおおまかな傾向は次のように整理できます。60Hzは文書作成やSNS閲覧など静止的な操作が中心の用途で不便を感じにくい水準、90Hz前後はウェブサイトの縦スクロールやアプリ切り替え時の滑らかさが体感しやすくなる水準、120Hz以上は対応したゲームでの残像の少なさや入力への追従感が意識されやすい水準とされています。ただし体感の差は個人差が大きく、静止画中心の使い方では違いに気づきにくいという声もあるため、カタログの数値だけで判断せず、店頭で複数の機種のスクロール動作を見比べてから選ぶことが望ましいといえます。
数値帯ごとに何が変わるか
数値の意味を、実際の使い方に置き換えます。重要なのは上限の数値ではなく、自分の使い方でその数値が働く場面があるかどうかです。
| 数値 | 体感しやすい場面 | 体感しにくい場面 | 消費電力への影響 |
|---|---|---|---|
| 60Hz | - | 文書作成、SNSの閲覧、動画視聴。静止的な操作が中心なら不便を感じにくい | 基準となる水準 |
| 90Hz前後 | ウェブサイトの縦スクロール、アプリの切り替え | 静止画中心の使い方、動画視聴 | 60Hzより増える |
| 120Hz以上 | 対応したゲームでの残像の少なさ、入力への追従感 | ゲームや高速なスクロールをしない使い方 | さらに増える。可変式なら差は小さくなる |
動画は多くが毎秒24〜60コマで作られているため、再生時に画面のリフレッシュレートを上げても、映像のコマ数そのものが増えるわけではありません。ただし、コマ数と画面の数値の組み合わせによる見え方の差はあります。Androidの開発者向け公式ドキュメントでは、毎秒24コマの動画を60Hzの画面で再生するには3:2プルダウンという変換が必要になる一方、画面を120Hzに切り替えればその変換が要らなくなり、カクつき(ジャダー)のない再生になると説明しています。高い数値がはっきり効くのは、スクロールやゲームのように端末側が毎フレーム描き替えている場面です。
| 確認すること | 見るところ | 見落とすとどうなるか |
|---|---|---|
| 可変式かどうか | 仕様表の表記(LTPOなど)、下限の数値 | 固定式の高リフレッシュレートは電池の減りが速い |
| 初期設定でオンになっているか | 端末の画面設定 | 高リフレッシュレート対応機なのに60Hzのまま使っている |
| アプリ側が対応しているか | ゲームの設定画面のフレームレート項目 | 端末が対応していてもアプリが60コマ上限なら差は出ない |
| 省電力モードとの関係 | 省電力時に自動で下がる設定があるか | 電池を節約する設定が滑らかさを打ち消していることがある |
高リフレッシュレート対応の機種を買っても、設定で有効になっていなければ意味がありません。購入後に画面設定を一度確認してください。画面の焼き付きとの関係はスマホの画面焼き付き対策 仕組みと日常の付き合い方、画面サイズとの兼ね合いはスマホの画面サイズと持ちやすさで選ぶときの考え方で扱っています。
数値で見るリフレッシュレート 1コマの表示時間
リフレッシュレートの違いを数字で見るために、1回の書き換えにかかる時間(1フレームの表示時間)を計算しました。1秒は1000ミリ秒(ms)なので、1000÷リフレッシュレート(Hz)で求められます。下の表の値は筆者が計算したもので、小数第3位を四捨五入しています。
| リフレッシュレート | 1フレームの表示時間(1000÷Hz) | 60Hzとの差 |
|---|---|---|
| 1Hz | 1000.00ms | - |
| 10Hz | 100.00ms | - |
| 24Hz | 41.67ms | - |
| 30Hz | 33.33ms | - |
| 60Hz | 16.67ms | 基準 |
| 90Hz | 11.11ms | 約5.56ms短い |
| 120Hz | 8.33ms | 約8.33ms短い |
| 144Hz | 6.94ms | 約9.72ms短い |
| 165Hz | 6.06ms | 約10.61ms短い |
60Hzから120Hzに上げると1コマの時間は半分になりますが、120Hzから165Hzに上げても短くなるのは約2.27msです。数値が上がるほど1段階あたりの差は小さくなります。この差をどの程度感じるかには個人差があり、アプリ側が出力するフレームレートにも左右されます。表は計算値で、実際の見え方や電池の持ちを測ったものではありません。
よくある誤解
リフレッシュレートについては、数値だけが独り歩きして誤解されやすい部分があります。代表的なものを整理します。
数値が高いほど常にバッテリー消費が増えるとは限らない
「最大リフレッシュレートが高い機種はバッテリーが持たない」とよく言われますが、これは可変リフレッシュレートに対応しているかどうかによって結論が変わります。前述のとおり、可変式の機種は状況に応じて数値を自動で下げるため、常時高い数値を維持する固定式の機種よりも電力消費を抑えられる設計になっています。最大値だけを見て消費電力を判断するのではなく、可変リフレッシュレートに対応しているかどうかも合わせて確認する必要があります。
アプリが常に最大リフレッシュレートで動作するとは限らない
スマートフォン自体が120Hzに対応していても、アプリやゲーム側が120Hz表示に対応していなければ、実際の表示は60Hzなど低い数値にとどまります。特にゲームアプリでは、対応するフレームレートの上限をアプリ側の仕様で定めている場合が多く、端末のスペックだけで判断できるものではありません。Androidの開発者向け公式ドキュメントにも、消費電力を抑えて長く遊べるようにゲーム側が60Hzを上限に指定すると、標準で90Hzで動く端末でもそのゲームの間は60Hzで動作する、という例が載っています。
リフレッシュレートとフレームレートは同じ概念ではない
両者は関連する数値ですが、厳密には別の概念です。リフレッシュレートは画面自体が1秒間に描き替えられる能力を示す数値であるのに対し、フレームレートはゲームや動画のコンテンツ側が1秒間に生成する映像のコマ数を指します。ディスプレイのリフレッシュレートがどれだけ高くても、コンテンツ側のフレームレートがそれを下回っていれば、体感できる滑らかさはコンテンツ側の数値に制約されます。
選び方・実践的なコツ
リフレッシュレートを基準に機種を選ぶ際は、次のポイントを確認すると失敗が少なくなります。
- 主な用途を明確にする。文書作成やSNS閲覧が中心なら60Hzでも実用上の不便は少なく、動画視聴やゲームが多いなら90Hz以上を検討する。
- プレイするゲームの対応状況を確認する。スマホ側が高いリフレッシュレートに対応していても、ゲームアプリ自体が対応していなければ恩恵を活かしきれない。
- 可変リフレッシュレートに対応しているかを確認する。固定式よりもバッテリー持ちと滑らかさを両立しやすい。
- パネルの種類を確認する。有機ELは低いリフレッシュレートでも表示品質を保ちやすく、省電力面でも有利になりやすい。
- 手動切り替えの有無を確認する。設定画面でリフレッシュレートを固定できる機種であれば、バッテリー優先と操作感優先を状況に応じて使い分けられる。
これらの項目はいずれもメーカーの公式スペックページや設定アプリ上で確認できる情報です。店頭であれば、実機の画面を実際にスクロールさせて動きを見比べることで、カタログ上の数値だけでは分からない体感差を確認できます。
よくある質問
リフレッシュレートは高ければ高いほど良いですか。
数値が高いほど画面の滑らかさは増しますが、可変リフレッシュレートに対応していない機種ではその分バッテリー消費も増える傾向があります。用途に合わせて必要な数値を見極めることが大切です。
60Hzの画面は今でも実用上問題ありませんか。
通常のブラウジングや文書作成といった用途では、60Hzでも大きな支障はないとされています。動きの多いコンテンツを重視する人ほど、高い数値の恩恵を感じやすくなります。
リフレッシュレートを手動で下げるとバッテリーは長持ちしますか。
一般的には長持ちしやすくなるとされていますが、具体的にどの程度延びるかはメーカーから公表されていないことが多く、その分画面の滑らかさは失われます。状況に応じてバッテリー優先か操作感優先かを切り替えるとよいでしょう。
リフレッシュレートとフレームレートは同じ意味ですか。
厳密には異なる概念です。リフレッシュレートは画面自体の描き替え能力を示す数値であり、フレームレートはゲームや動画のコンテンツ側が生成する映像のコマ数を指します。
タッチサンプリングレートも高いほうがよいですか。
対戦ゲームなど反応速度が重要な用途では、数値が高いほど入力の検知が細かくなり有利に働くとされています。表示用途が中心であれば、リフレッシュレートほど重視しなくても差し支えありません。
可変リフレッシュレート(LTPO)はどの価格帯の機種にも搭載されていますか。
対応パネルの製造コストが高いため、主に上位モデルへの搭載が中心です。中位モデル以下では固定式の高リフレッシュレート表示にとどまることが多くなります。たとえばGoogleの公式仕様では、LTPO OLEDのPixel 10 Proが1〜120Hzなのに対し、Pixel 9aは60〜120Hzで、下限が60Hzより下がりません。
中古のスマホでリフレッシュレートの仕様は確認できますか。
メーカーの公式スペックページに機種名を入力すれば確認できます。設定アプリの画面表示に切り替え項目があれば、対応していることの目安にもなります。
リフレッシュレートの数値はOSのアップデートで変わることがありますか。
ハードウェアの上限自体は変わりませんが、ソフトウェアのアップデートによって可変リフレッシュレートの制御ロジックが調整され、体感が変化する場合はあるとされています。詳細な変更内容は機種ごとのアップデート情報を確認する必要があります。
まとめ
リフレッシュレートは、画面の滑らかさとバッテリー消費のバランスを決める重要な指標ですが、数値の大小だけで単純に比較できるものではありません。可変リフレッシュレートに対応しているか、採用しているパネルが有機ELか液晶か、そして実際に使うアプリやゲームが高い数値に対応しているかによって、体感できる恩恵とバッテリーへの影響は変わります。日常的な使い方が中心であれば標準的な数値でも十分ですが、動画視聴やゲームを頻繁に楽しむ人は、可変リフレッシュレートに対応した上位モデルを検討する価値があります。購入前には、カタログの数値だけでなく実機の操作感やゲームの対応状況もあわせて確認しておくと安心です。
ゲームで表示のなめらかさを重視する場合の環境づくりは家庭のゲーム環境の整え方 機器10分野の比較と無断課金を防ぐ設定で扱っています。
出典・参考情報
VESA(Video Electronics Standards Association)が策定するディスプレイ関連の規格。可変リフレッシュレート(Adaptive-Sync)などの仕様が含まれます/リフレッシュレート(Hz)、応答速度、タッチのサンプリングレートといった数値は各メーカーが公表する仕様に基づくもので、測定条件はメーカーごとに異なります/体感差の感じ方には個人差があり、表示する内容(静止画、スクロール、動きの速い映像)によっても変わるため、本記事では特定の数値で断定していません/リフレッシュレートを上げると消費電力が増える傾向があるのは動作原理上の一般的な性質で、実際の増加幅は機種と表示内容によって変わります。可変駆動に対応する機種では消費電力の挙動が異なります。
