セキュリティ・通信

ガジェットと著作権 録画・録音・スクリーンショットはどこまで許されるか

録画、録音、スクリーンショット、ダウンロード。ガジェットを使っていると、著作物を手元に複製する場面が日常的にあります。「自分だけで見るなら自由」と考えられがちですが、その範囲には条件があり、条件を外れると違法になる場合があります。この記事では著作権法が定める私的使用の考え方を出発点に、機器を使う場面ごとに何が認められ、何が認められないのかを整理します。2021年の改正で対象が広がったダウンロードについても扱います。

この記事でわかること

私的使用のための複製という原則と、その範囲/2021年1月施行の改正で何が変わったか/技術的保護手段を回避することの扱い/スクリーンショットと写り込みの関係/テレビ番組の録画・書籍の自炊・SNS投稿それぞれの考え方

本記事は公開されている制度の内容を一般的に整理したものです。個別の行為が適法かどうかは事情によって変わります。判断に迷う場合は弁護士など専門家に相談してください。

出発点は「私的使用のための複製」

著作権法には、個人的にまたは家庭内など限られた範囲で使用することを目的とする場合、著作物を複製できるという定めがあります。手元の機器に音楽を取り込む、番組を録画して後で見る、といった行為はこの規定に基づいています。

ただし無制限ではありません。同じ「自分で見るため」でも、条件によって扱いが変わります。次の3つが主な境界線です。

境界線 内容
使用する範囲 個人的または家庭内その他これに準ずる限られた範囲。友人への配布や職場での共有は範囲外
複製の手段 技術的保護手段(コピー防止機能)を回避して行う複製は認められない
元になった著作物 違法にアップロードされたものと知りながらダウンロードする行為は対象外となる場合がある

2021年1月施行の改正で変わったこと

2020年6月に成立し、2021年1月1日に施行された改正著作権法により、違法にアップロードされた著作物のダウンロードに関する規制の対象が広がりました。

時期 規制の対象
改正前 音楽と映像のみ
改正後 漫画、書籍、新聞、論文、プログラムなど、すべての著作物

背景には海賊版サイトへの対策があります。ただし対象が広がった一方で、行きすぎた規制にならないよう例外も設けられています。

対象外とされるもの 内容
軽微なもの 数コマ程度の漫画など、分量がごく一部にとどまる場合
写り込み スクリーンショットに違法にアップロードされた画像が写り込んだ場合、それだけで違法とはならない
知らなかった場合 違法にアップロードされたものだと知らずにダウンロードした場合

刑事罰について、要件が定められています。正規版が有償で提供されている著作物を、継続的または反復してダウンロードした場合に、2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があるとされています(著作権法第119条第3項)。「継続的に又は反復して」という要件が条文に書かれているのは、漫画・書籍など音楽・映像以外の著作物を扱う同項第2号です。音楽・映像の録音・録画を扱う第1号にはこの文言がなく、文化庁のQ&Aも音楽・映像は「基本的に現行通りの取扱い」としています。漫画や書籍は1回の行為で直ちに刑事罰の対象になる構造ではありませんが、音楽・映像は回数の要件がない点で扱いが異なります。なお民事上は、単発のダウンロードでも違法となり得るとQ&Aは説明しています。無料で読める違法サイトを日常的に利用する行為は、刑事罰の要件にも近づいていきます。

「見るだけ」と「保存」の線引き、刑事罰の細かい条件

文化庁のQ&A(侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するQ&A)では、次の点が示されています。既存の説明と合わせて確認しておくと、判断の材料が増えます。

視聴・閲覧だけなら違法化の対象外

今回の改正で違法とされるのは、侵害コンテンツを意図的・積極的にダウンロードする行為です。侵害コンテンツであっても、単に視聴・閲覧するだけなら違法にはならないと、Q&Aの問10に書かれています(政府がそうした行為を推奨するものではない、という付記つきです)。視聴や閲覧に伴って一時的に作られるキャッシュなども、著作権法第47条の4第1項により適法とされています。

刑事罰の条件は「有償」「告訴」、音楽・映像以外は「継続的または反復」も

  • 漫画・書籍など音楽・映像以外の著作物では、正規版が有償で提供されている著作物の海賊版を、継続的または反復してダウンロードした場合が対象です。音楽・映像の録音・録画(第119条第3項第1号)には、継続・反復の文言はありません。どちらも、有償で提供されているものの侵害コンテンツだと知りながら行ったことが条件になっています。
  • ここでいう「有償」は、利用者から視聴などの対価(料金)を徴収していることを指します。正規版が広告収入型で無料配信されているものは、刑事罰の対象にはなりません。ただしQ&Aは、この要件は刑事罰の対象を絞るために加えたもので、民事上は無償の正規版があるものでも違法となり得ると説明しています。
  • この罪は親告罪で、権利者の告訴がなければ起訴されません。罰則は2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその併科です。Q&A(令和2年12月版)は当時の条文どおり「懲役」と書いていますが、現在の条文は「拘禁刑」です。
  • 「継続的に又は反復して」の回数や期間について、Q&Aは具体的な基準を示すのは困難としています。

例外はスクリーンショットと軽微なものだけではない

文化庁のリーフレットは、違法とならない例外として次の4つを挙げています。

  • スマートフォンでスクリーンショットを撮る際に違法な画像が入り込む場合
  • 漫画の1コマから数コマなど、作品のごく一部の「軽微」なダウンロード
  • 同人誌などの二次創作・パロディのダウンロード
  • 権利者の利益を不当に害しない「特別な事情」がある場合

海賊版かどうか分からない場合や、正規版だと誤解した場合は違法になりません。見分ける目印として、出版社などは正規サービスに「ABJマーク」を表示する取り組みを進めており、音楽・映像の正規サイトには以前から「エルマーク」が表示されています。マークがないことだけで違法と決まるわけではないため、あくまで確認の手がかりの一つとして使ってください。

なお、ストリーミング型の海賊版サイトについては、ダウンロードの規制とは別に、侵害コンテンツへ誘導する側を対象とするリーチサイト規制の対象にもなっている、と文化庁のQ&Aは説明しています。この記事は制度の一般的な整理であり、個別の行為の適否についての助言ではありません。

場面ごとの整理

テレビ番組の録画

行為 一般的な整理
自宅で番組を録画して後で見る 私的使用の範囲として認められる
家族で一緒に見る 家庭内の使用として認められる
録画したものを友人に渡す 私的使用の範囲を超える
録画したものをネットに公開する 公衆送信にあたり認められない
コピー制御を回避して複製する 技術的保護手段の回避にあたり認められない

放送の録画には、複製できる回数を制限する仕組みが設けられています。この制限自体を回避する行為は、私的使用であっても認められません。機器の選び方は家庭用テレビの選び方 有機ELと液晶の違いを比較や動画配信サービスを快適に楽しむためのデバイス選びで扱っています。

配信サービスの画面録画

動画配信サービスの多くは、録画を制限する仕組みを備えており、利用規約でも禁じているのが一般的です。技術的な制限を回避して録画する行為は、私的使用であっても認められません。また規約違反はアカウントの停止につながります。画面録画そのものの操作方法はスマホの初期設定と使いながら見直す設定まとめ 通知・アプリ整理・位置情報・画面録画・音声操作までにまとめていますが、対象によって扱いが変わる点は理解しておいてください。

スクリーンショット

自分の操作記録を残す、エラー画面を保存して問い合わせに使うといった用途は問題になりません。判断が必要なのは、他人の著作物が写っている場合です。

場面 考え方
ウェブページを保存して自分で見返す 私的使用の範囲
違法にアップロードされた画像が端に写り込んだ 写り込みとして、それだけでは違法とならない
他人の著作物を主たる対象として保存し公開する 公開の段階で別の問題が生じる
人物が写っている画面を共有する 著作権とは別に肖像権やプライバシーへの配慮が要る

音楽・音声の録音

購入した音楽を自分の機器に取り込む行為は私的使用の範囲です。一方、配信サービスの音声を録音して保存する行為は、規約で禁じられていることが一般的です。会議や講義の録音については、著作権とは別に、参加者への配慮や社内規定の問題が関わります。詳しくはICレコーダーとAI文字起こしデバイスの選び方 3つの選択肢を比較するで扱いました。

書籍の電子化(自炊)

行為 一般的な整理
自分が買った本を自分でスキャンする 私的使用のための複製にあたる
スキャンしたデータを他人に渡す 私的使用の範囲を超える
業者にスキャンを依頼する 文化庁の解説資料は、私的使用の条件を「使用する本人が複製すること」とし、業者が行うこと(自炊代行業者等)は認められないと整理している
図書館の本をスキャンする 文化庁の解説資料は「自分で読むために借りてきた本をコピーする」ことを私的使用の例に挙げている。自分で読むために本人が複製する範囲なら私的使用にあたり得るが、データを他人に渡すことは範囲を超える

スキャンした書籍データの保存は、写真や動画と同じく複数の場所に置くのが基本です。保存の設計は家庭の写真・映像を残す仕組み 撮る機器の選び分けから保存の設計までにまとめています。

ゲームソフトとプログラム

2021年の改正で、プログラムも違法ダウンロードの規制対象に含まれるようになりました。また、ゲームソフトのコピー防止機能を回避する行為も認められません。パッケージ版とダウンロード版で権利の扱いが違う点はゲームソフトはパッケージ版とダウンロード版どちらを選ぶか 売却時の違いまで比較で扱っています。

SNSへの投稿

私的使用の規定は「個人的または家庭内その他これに準ずる限られた範囲」を前提としています。不特定多数が見られる場所への投稿は、この範囲を超えます。他人の著作物を投稿する場合、引用として認められる要件を満たすかを検討する必要があります。引用には、主従関係が明確であること、引用部分が区別されていること、出所を明示することといった条件が求められるとされています。

迷ったときの判断材料

問い 判断の方向
自分と家族だけで使うか 私的使用の範囲に収まる可能性が高い
コピー防止の仕組みを回避したか 回避していれば私的使用でも認められない
元は正規に配信されたものか 違法にアップロードされたものと知りながら取得する行為は対象外となる場合がある
他人に渡すか、公開するか 渡す・公開する段階で別の問題が生じる
サービスの規約はどうなっているか 法令とは別に、規約違反はアカウント停止につながる

最後の項目は見落とされがちです。法令上の問題がなくても、サービスの利用規約に反すればアカウントを失う可能性があります。アカウントを失うと、そこで購入したコンテンツも使えなくなります。

よくある失敗と注意点

「自分だけで見るなら何でもよい」と考える

私的使用には条件があります。技術的保護手段を回避した複製や、違法にアップロードされたものと知りながらのダウンロードは範囲外です。

無料で読める違法サイトを日常的に使う

正規版が有償で提供されている著作物を継続的または反復してダウンロードした場合、刑事罰の対象になり得るとされています。

録画したものを家族以外に渡す

私的使用の範囲は個人的または家庭内その他これに準ずる限られた範囲です。友人への配布は範囲を超えます。

規約を読まずに配信サービスを録画する

法令の問題に加えて、規約違反によるアカウント停止のリスクがあります。購入済みのコンテンツも使えなくなる可能性があります。

引用の要件を満たさずに他人の著作物を投稿する

主従関係、区別、出所の明示といった条件があります。転載と引用は別のものです。

よくある質問

テレビ番組を録画して後で見るのは問題ありませんか

自宅で個人的にまたは家庭内で見る目的であれば、私的使用のための複製として認められます。ただしコピー制御を回避して複製する行為や、録画したものを他人に渡す行為は範囲を超えます。

2021年の改正で何が変わりましたか

違法にアップロードされた著作物のダウンロードについて、規制の対象が音楽と映像から、漫画・書籍・新聞・論文・プログラムなどすべての著作物に広がりました。一方で、数コマ程度の漫画のような軽微なものや、スクリーンショットへの写り込みは対象外とされています。

スクリーンショットに違法な画像が写り込んだ場合はどうなりますか

写り込んだだけでは違法にならないとされています。改正の際に、行きすぎた規制にならないよう設けられた例外です。ただし他人の著作物を主たる対象として保存し、それを公開する場合は別の問題が生じます。

刑事罰の対象になるのはどんな場合ですか

正規版が有償で提供されている著作物の海賊版を、違法と知りながらダウンロードした場合が対象とされています。漫画・書籍など音楽・映像以外は「継続的に又は反復して」行ったことも要件ですが、音楽・映像の録音・録画にはこの要件が書かれていません。罰則は2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその両方です。権利者の告訴がなければ起訴されない親告罪です。

買った本を自分でスキャンしてもよいですか

自分が所有する本を、自分で、私的使用のためにスキャンする行為は認められます。データを他人に渡すことは範囲を超えます。業者に依頼する形態については、文化庁の解説資料が私的使用の条件を「使用する本人が複製すること」とし、自炊代行業者等が行うことは認められないと整理しています。

配信サービスの動画を録画してもよいですか

多くのサービスが技術的に録画を制限し、規約でも禁じています。技術的保護手段を回避する行為は私的使用であっても認められません。加えて規約違反はアカウント停止につながります。

SNSに他人の画像を載せてもよいですか

不特定多数が見られる場所への投稿は私的使用の範囲を超えます。引用として認められるには、主従関係が明確であること、引用部分が区別されていること、出所を明示することといった条件を満たす必要があるとされています。

会議の録音は著作権の問題になりますか

通常の会議の発言そのものは、著作物として保護される場合とそうでない場合があります。むしろ実務上は、参加者への配慮や社内の情報管理規定のほうが問題になります。講演やセミナーの録音は、主催者が禁じている場合が多いので確認してください。

判断に迷う場合はどうすればよいですか

個別の行為が適法かどうかは事情によって変わります。業務に関わる場合や、規模が大きい場合は、弁護士など専門家に相談してください。本記事は一般的な整理を示すもので、法的助言ではありません。

ゲームの映像を配信する場合の具体的な扱いはゲーム配信を始める機材の選び方 ガイドラインの確認から買う順番までで、実際に公表されているガイドラインの内容をもとに整理しました。

著作物の扱いと並んで意識したいのが、機器そのものの制度上の位置づけです。技適やPSEの意味と表示がない製品のリスクはガジェットの認証マーク 技適とPSEの意味と表示がない製品のリスクで、家庭全体のセキュリティ対策は家庭のセキュリティ対策 10大脅威2026を30分・今週・習慣の3段階に置き換えるで整理しています。

著作権法以外にガジェットへ関わる制度の全体像はガジェットに関わる法律の地図 買う・使う・手放すの3段階で整理するにまとめています。

まとめ

著作物の複製は、個人的または家庭内その他これに準ずる限られた範囲での使用を目的とする場合に認められます。ただし条件があり、技術的保護手段を回避した複製と、違法にアップロードされたものと知りながらのダウンロードは範囲外です。2021年1月施行の改正で、違法ダウンロードの規制対象は音楽と映像からすべての著作物に広がりました。刑事罰は、正規版が有償で提供されている著作物の海賊版を知りながらダウンロードした場合が対象とされ(音楽・映像以外は継続的または反復して行った場合)、2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。判断に迷ったときは、自分と家族だけで使うのか、コピー防止の仕組みを回避していないか、他人に渡さないか、そしてサービスの規約はどうなっているか。この4点を順に確認してください。 レトロゲームのROM吸い出しに絞った条件の整理はレトロゲーム互換機の選び方 公式ミニ機とエミュレーター機の違い、ROM吸い出しの合法条件で扱っています。

出典

著作権法(私的使用のための複製、技術的保護手段の回避に関する規定、引用の要件)/2020年6月成立・2021年1月1日施行の改正著作権法(違法にアップロードされた著作物のダウンロードに関する規制対象を音楽・映像からすべての著作物へ拡大。数コマ程度の軽微なものやスクリーンショットへの写り込みは対象外。刑事罰は正規版が有償で提供されている著作物の侵害コンテンツを知りながらダウンロードした場合が対象で、音楽・映像以外は継続的または反復して行った場合。罰則は著作権法第119条第3項で2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその併科)/文化庁「侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するQ&A」および普及啓発用リーフレット「ちょっと待って!そのダウンロード違法かも?」(令和3年1月1日施行に合わせて公表された資料。視聴のみは対象外、刑事罰の要件と罰則、親告罪、例外4類型、ABJマーク・エルマーク)、文化庁「令和2年通常国会 著作権法改正について」

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