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住宅の防犯 統計が示す侵入手口と機器で対策できる範囲

住宅の防犯というと、ピッキング対策の鍵や防犯カメラの話が先に出てきます。しかし警察庁の統計を見ると、実態はかなり違います。令和7年に住宅で発生した空き巣・忍込み・居空きのうち、無締り(鍵の閉め忘れ)とガラス破りの2つで約8割を占め、ピッキングとサムターン回しは全体の0.2%に満たない件数です。この記事では統計から侵入手口の実態を確認し、対策の優先順位と、機器でできる範囲・できない範囲を整理します。数字を見れば、どこに費用をかけるべきかは明確になります。

この記事でわかること

令和7年の侵入手口の内訳と割合/一戸建てと共同住宅で違う狙われ方/ピッキング対策より優先すべきこと/費用をかけずにできる対策と、機器で補える範囲/予算別の組み立て方

統計で見る侵入手口

警察庁が公表している令和7年の刑法犯に関する統計資料から、住宅を発生場所とする空き巣・忍込み・居空きの侵入手段を集計しました。

侵入手段 件数(3手口の合計) 割合
無締り(鍵の閉め忘れ) 6,931件 約41%
ガラス破り 6,347件 約38%
施錠開け(合いかぎ、ピッキング等) 1,320件 約8%
ドア錠破り 393件 約2%
その他・戸外し・不明 残り —

認知件数の合計は16,871件(空き巣11,575件、忍込み4,621件、居空き675件)です。無締りとガラス破りを合わせると約79%で、大半がこの2つに集中しています。

ピッキングは0.2%に満たない

統計では、施錠開けの内訳も分かります。ピッキングとサムターン回しを指す「特殊開錠用具関係」は、空き巣19件、忍込み5件、居空き1件の合計25件でした。3手口の認知件数16,871件に対して約0.15%です。

同じ資料で平成28年からの推移を見ると、特殊開錠用具関係は161件から25件まで減っています。ただし減ったのはこの手口だけではなく、3手口の認知件数全体も39,090件から16,871件へと半分以下になりました。減少の理由までは統計からは読み取れません。

住宅への侵入手口(無締り・ガラス破り・施錠開け)の認知件数を平成28年・令和6年・令和7年で比べた棒グラフ。無締りは18,996件から6,931件、ガラス破りは12,894件から6,347件
図 住宅への侵入手口の件数の推移(警察庁の刑法犯に関する統計資料をもとに作成)
侵入手段(3手口の合計) 平成28年 令和6年 令和7年
認知件数 39,090件 15,865件 16,871件
無締り 18,996件 7,455件 6,931件
ガラス破り 12,894件 5,006件 6,347件
施錠開け 2,207件 1,275件 1,320件
うち特殊開錠用具関係 161件 36件 25件

警察庁の図表2-2-1-4にある空き巣・忍込み・居空きの数値を合算しています。目を引くのは直近の動きで、無締りが減った一方、ガラス破りは令和6年から令和7年にかけて増えました。空き巣だけで見ると3,891件から4,665件へ、約2割の増加です。

いま高性能な錠に交換しても、全体の0.2%に満たない手口に備えることにしかなりません。費用をかける先としては、無締りとガラス破りへの対策が先です。

施錠開けの中身は合いかぎ

施錠開け1,320件のうち多くを占めるのは合いかぎです。とくに共同住宅で目立ちます。令和7年の空き巣について、住宅形態別に見ると次のような内訳になっています。

住宅形態 表出入口からの侵入 そのうち施錠開け 施錠開けのうち合いかぎ
共同住宅(4階建以上) 822件 395件 337件
共同住宅(3階建以下) 1,031件 360件 304件

共同住宅の玄関から入られたケースでは、施錠開けの8割台半ば(4階建以上で395件中337件、3階建以下で360件中304件)が合いかぎです。鍵を持っている誰か、あるいは複製された鍵が使われているということです。入居時に鍵が交換されているか、鍵を人に預けたことはないか、といった確認が実際的な対策になります。

住宅形態で狙われ方が違う

令和7年の空き巣について、侵入口の内訳を見ると住宅形態による違いがはっきり出ます。

住宅形態 認知件数 主な侵入口 手口の傾向
一戸建住宅 8,214件 窓5,006件、表出入口1,340件 窓ではガラス破り3,577件が最多、表出入口では無締り764件が最多
共同住宅(3階建以下) 2,095件 表出入口1,031件、窓776件 表出入口は無締り503件と施錠開け360件、窓はガラス破り429件と無締り313件
共同住宅(4階建以上) 1,266件 表出入口822件、窓290件 表出入口は施錠開け395件と無締り303件

整理すると、次のようになります。

住まい 優先すべき対策
一戸建て 窓の対策(ガラス破りと閉め忘れの両方)
低層の共同住宅 玄関の施錠習慣と、窓の対策の両方
高層の共同住宅 玄関の鍵の管理(合いかぎ対策)と施錠習慣

警察庁は、侵入者が下見で確かめる点として「庭木など死角になるものがあるか」「足場になるものがあるか」を挙げています。一戸建てで窓が多く狙われる理由を統計は示していませんが、筆者は、こうした死角や足場が窓のまわりにできやすいことが関係しているとみています。逆に高層の共同住宅では窓からの侵入が相対的に減り、玄関の鍵の管理が焦点になります。

対策の優先順位

統計から導かれる順序で並べます。上から順に、費用対効果が高いものです。

順番 対策 対応する手口 費用
1 短時間の外出でも施錠する習慣をつくる 無締り(約41%) 無料
2 窓の鍵(クレセント錠)を閉める、補助錠を足す 無締り、ガラス破り 1か所千円前後から
3 窓に防犯フィルムを貼る ガラス破り(約38%) 1窓数千円から
4 センサーライト、人感センサーを設置する 侵入前の抑止 3千〜1万円
5 カメラやドアホンで記録・確認できるようにする 抑止と事後の確認 5千〜5万円
6 鍵の管理を見直す(合いかぎ、入居時の交換) 施錠開けのうち合いかぎ 交換で1万〜3万円
7 防犯性能の高い錠に交換する ピッキング等(約0.15%) 2万〜5万円

1番目と2番目は費用がかかりません。それでいて、統計上の8割近くを占める手口に直接効きます。機器を買う前に、まずここが習慣として定着しているかを確認してください。

ガラス破りへの対策

ガラス破りは、窓ガラスを割って手を入れ、クレセント錠を開けて侵入する手口です。対策の考え方は、割ること自体を難しくするのではなく、割ってから侵入するまでの時間を延ばすことにあります。

対策 効果
防犯フィルム ガラスが割れても穴が開きにくくなり、手を入れるまでの時間が延びる
補助錠 クレセント錠を開けられても窓が開かない。窓の上下に追加する
面格子 浴室やトイレの小窓に有効
センサー付きの窓用アラーム 振動や開閉を検知して音を鳴らす
雨戸・シャッター 閉めるという習慣とセットで機能する

警察庁のリーフレットも、補助錠の取り付けや防犯フィルム、防犯ガラスなど防犯性能の高い建物部品(CP製品)で窓ガラスの性能を強化するよう呼びかけています。CPマークは、約7割の泥棒が侵入をあきらめるとされる「5分」に耐えることを基準にした防犯性能試験をクリアした部品に付くもので、全国防犯協会連合会の目録には2026年9月2日現在で17種類3,550品目が載っています。ウィンドウフィルムのほか、錠やサムターン、面格子、窓シャッターも区分があるので、製品選びの目安になります。

機器でできること、できないこと

ここを混同すると、機器を買っても不安が解消されません。

機器 できること できないこと
防犯カメラ 記録を残す、見えることで抑止する、遠隔で確認する 侵入そのものを物理的に止める
センサーライト 近づいた時点で明かりをつけ、人目につく状況を作る 常時の監視
スマートロック 閉め忘れの確認と遠隔での施錠、鍵の一時的な共有 ガラス破りへの対応。電池切れ時は物理鍵が必要
ドアホン 来訪者の確認と記録、不在時の応答 窓からの侵入への対応
窓用アラーム 侵入時に音で知らせる 不在時に誰かが気づくとは限らない
宅配ボックス 不在を知られる機会を減らす それ自体は防犯設備ではない

もっとも重要なのは、スマートロックは無締り対策には効くが、ガラス破りには効かないという点です。統計上の最大の手口である無締りに対しては、遠隔で施錠状態を確認できることが直接の解決になります。一方、2番目に多いガラス破りには、窓側の対策が必要です。

各機器の選び方は個別記事にまとめています。カメラは防犯カメラ・ネットワークカメラの選び方、屋内用と屋外用の違い、錠はスマートロックの選び方 タイプ別の特徴と設置の注意点、来訪者の確認は家庭用インターホン スマートドアホンの選び方、宅配はスマート鍵付き宅配ボックスの選び方 設置方式で比較、照明の自動化はスマート照明の選び方 部屋別のおすすめの選択基準で扱っています。全体の導入順はスマートホームの始め方 12分野を導入効果で採点しMatter対応の考え方まで解説にまとめました。

予算別の組み立て方

予算 構成 対応できる手口
0円 短時間の外出でも施錠する、窓のクレセント錠を閉める、在宅時も玄関を施錠する 無締り(約41%)
1万円まで 窓の補助錠を主要な窓に追加、玄関にセンサーライト 無締り、ガラス破りの一部
3万円まで 上記+主要な窓に防犯フィルム、屋外カメラ1台 ガラス破りへの時間稼ぎと抑止
5万円以上 上記+スマートロック、ドアホンの更新、窓用アラーム 閉め忘れの確認、来訪者の記録

留守中に人がいるように見せる工夫も、費用をかけずにできる対策です。時間帯に応じて照明を自動で点灯させる設定は、スマート照明の基本機能で実現できます。

よくある失敗と注意点

ピッキング対策から始める

統計上0.2%に満たない手口です。無締りとガラス破りが約8割を占めることを踏まえて優先順位を決めてください。

カメラを設置して安心する

カメラは記録と抑止のための機器で、侵入を物理的に止めるものではありません。窓と鍵の対策と組み合わせて初めて機能します。

短時間の外出で施錠しない

ごみ出しや近所への買い物の間に入られる例があります。忍込みや居空きは在宅中の被害で、令和7年は合わせて5,296件でした。

2階の窓を対策から外す

足場になるものがあれば2階も侵入口になります。ベランダに面した掃き出し窓は対策の対象です。

賃貸で工事が必要な対策を検討する

貼り付け式の補助錠、置き型のカメラ、フィルムなど、原状回復できる方法から選んでください。設置前に管理会社への確認も必要です。

よくある質問

まず何をすればよいですか

施錠の習慣です。令和7年の統計では、住宅を発生場所とする空き巣・忍込み・居空きのうち約41%が無締りによるものでした。短時間の外出でも施錠し、在宅時も玄関と窓を閉める。費用をかけずに最大の手口に対処できます。

防犯フィルムは効果がありますか

ガラスが割れても穴が開きにくくなるため、侵入までの時間を延ばす効果が期待できます。ガラス破りは統計上約38%を占める手口です。製品を選ぶときは、防犯性能試験をクリアしたことを示すCPマークの有無が目安になります。

カメラはダミーでもよいですか

抑止だけを目的とするなら一定の効果が期待できるという考え方もありますが、実際に被害が起きた場合に記録が残りません。費用の差は大きくないため、記録できる製品を選ぶほうが実用的です。

マンションの高層階なら安心ですか

統計では、4階建以上の共同住宅でも令和7年に空き巣が1,266件発生しています。侵入口は表出入口が822件と最多で、うち施錠開けが395件、その多くが合いかぎです。窓より玄関の鍵の管理が焦点になります。

鍵はいつ交換すべきですか

入居時に前の入居者が使っていた鍵のままになっていないか確認してください。共同住宅での施錠開けの多くが合いかぎである以上、誰が鍵を持ち得るかを把握しておくことが対策になります。

スマートロックは防犯上どうですか

閉め忘れの確認と遠隔での施錠ができるため、無締り対策として効果があります。一方、ガラス破りへの対応にはなりません。電池切れで解錠できなくなる事態を避けるため、物理鍵の携帯は必須です。

センサーライトはどこに設置すべきですか

玄関だけでなく、外から見えにくい場所が有効です。一戸建てでは窓からの侵入が多いため、道路から死角になる側の窓の周辺に設置すると、近づいた時点で明かりがつく状況を作れます。

長期の旅行で家を空けるときは

新聞や郵便を止め、照明を時間帯で自動点灯させ、宅配は再配達にせず日時を指定するといった対策で、不在が分かりにくい状況を作ります。SNSで旅行中であることを発信しないという配慮も含まれます。

車両を狙う手口には「家に侵入し、車のキーを盗む」も含まれます。住宅の防犯と地続きの話として車の盗難対策 統計が示す現場の変化と機器で防げる範囲で扱っています。

まとめ

住宅の防犯は、統計を見れば優先順位がはっきりします。令和7年の住宅における空き巣・忍込み・居空きでは、無締りが約41%、ガラス破りが約38%で、この2つだけで約8割を占めます。一方、ピッキングやサムターン回しは0.2%に満たない水準です。まず施錠の習慣を作り、次に窓の補助錠と防犯フィルムで時間を稼ぐ。ここまでは1万円前後で始められます。機器はその後で、カメラは記録と抑止、スマートロックは閉め忘れの確認、センサーライトは近づいた時点での抑止と、役割を理解して選んでください。住まいの形態によって狙われ方が違う点も重要です。一戸建ては窓、高層の共同住宅は玄関の鍵の管理が焦点になります。

出典

警察庁「令和7年の刑法犯に関する統計資料」(令和8年8月)より、住宅を発生場所とする空き巣・忍込み・居空きの侵入手段別・侵入口別・住宅形態別の認知件数(令和7年の空き巣11,575件・忍込み4,621件・居空き675件、無締り6,931件・ガラス破り6,347件・施錠開け1,320件・特殊開錠用具関係25件など。特殊開錠用具関係はピッキングおよびサムターン回しを指す)

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