モバイルバッテリー・電源

リチウムイオン電池の火災を防ぐ 統計で見る出火原因と正しい捨て方

モバイルバッテリーやコードレス掃除機など、充電して繰り返し使う機器はどの家庭にもあります。その電池から出火する火災が、統計の上で急増しています。消防庁が令和8年3月26日に公表した調査結果(令和7年1〜12月分)によれば、リチウムイオン電池等から出火した火災は令和4年601件、令和5年739件、令和6年982件、令和7年1,297件と右肩上がりで、製品別ではモバイルバッテリーが最多です。令和7年のモバイルバッテリーは482件で、前年の290件から約7割増えました。この記事では統計から出火原因を確認し、日常の扱い方と正しい捨て方を整理します。

この記事でわかること

リチウムイオン電池の火災件数の推移と製品別の内訳/出火原因の傾向/危険な兆候と気づいたときの対処/ごみ収集車や処理施設で火災が起きる理由/自治体やメーカーの回収に出す手順

統計で見る火災の実態

消防庁は令和4年から令和7年まで、各年の1月1日から12月31日の間に発生した、リチウムイオン電池およびそれを搭載した製品から出火した火災を全国の消防機関から集計しています。

リチウムイオン電池等の火災件数の推移(令和4年601件から令和7年1,297件)と製品別件数の図解
図 リチウムイオン電池等の火災件数と製品別の内訳(出典 総務省消防庁、令和8年3月26日公表の令和7年調査をもとにガジェット広場作成)
期間 火災件数
令和4年(1〜12月) 601件
令和5年(1〜12月) 739件
令和6年(1〜12月) 982件
令和7年(1〜12月) 1,297件

この数値には、廃棄された電池を回収中のごみ収集車やごみ処理関連施設から出火した火災は含まれていません。それらは別に集計されており、令和7年はごみ処理関連施設106件、ごみ収集車107件の合計213件でした(令和6年はごみ処理関連施設96件、ごみ収集車84件の合計180件)。つまり令和7年には、使用中と廃棄時を合わせて1,500件を超える火災が起きていることになります。

製品別ではモバイルバッテリーが突出

令和7年(1〜12月)の製品別出火件数を、令和6年と並べると次のとおりです。

製品 令和7年の件数 令和6年の件数
モバイルバッテリー 482件 290件
携帯電話機 93件 85件
電動工具 86件 89件
ポータブル電源 51件 54件
電動アシスト自転車 51件 50件
コードレス掃除機 45件 50件
タブレット 40件 24件
ワイヤレスイヤホン 31件 23件
ポータブルスピーカー 26件 19件
ノートパソコン 25件 22件

令和7年の上位にはこのほか携帯扇風機が26件あります(令和6年は15件)。件数が前年より減った製品は電動工具、ポータブル電源、コードレス掃除機の3つで、増えた製品が大半を占めます。

モバイルバッテリーは令和4年の122件、令和5年の182件、令和6年の290件、令和7年の482件と毎年増えています。令和7年は前年より約7割多く、令和4年の約4倍です。

出火原因は製品によって違う

消防庁の資料では、出火件数の上位となった製品ごとに原因が分析されています。

製品 目立つ出火原因
モバイルバッテリー 外部衝撃(41件)、高温下での使用・保管(23件)、製品の欠陥(18件)、分解・充電方法の誤り(各11件)
電動工具 非純正バッテリーの使用(15件)、充電方法の誤り・高温下での使用・外部衝撃(各7件)
携帯電話機 外部衝撃(32件)、分解(29件)

ここから導かれる対策は明確です。モバイルバッテリーは落とさない・高温の場所に置かない、電動工具は純正の電池を使う、携帯電話は落下と自己修理に注意する。製品ごとに気をつけるべき点が違うということが、統計から読み取れます。

なお、製品評価技術基盤機構(NITE)も同様の傾向を示しており、2021年から2025年までの5年間に通知されたリチウムイオン電池搭載製品の事故は2,140件で、製品別ではモバイルバッテリーが最多、事故は気温の上昇とともに増えて8月にピークを迎えるとしています。

日常の扱い方

環境省は2025年12月23日、関係省庁が連携して取りまとめた「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」を発表し、電池の取り扱いを「リチウムイオン電池の3つのC」として政府全体で呼びかけています。NITEも事故防止の啓発でこの3つのCを紹介しています。

3つのC 内容
賢く選ぶ 販売事業者の連絡先や製品情報、リコール情報を確認する。表示マークを確かめる
丁寧に使う 高温になる場所で使用・保管しない。強い衝撃や圧力を加えない。異常を感じたら使用を中止する
正しく捨てる リチウムイオン電池が使われているかを確認し、メーカーの回収や自治体の回収区分に従って処分する

やってはいけない置き方・使い方

避けること 理由
夏の車内に置いたままにする 高温下での使用・保管は出火原因の上位。車内は想定を超える温度になる
直射日光の当たる窓際に置く 同上。備蓄用に保管する場合も置き場所に注意する
布団や座布団の上で充電する 放熱が妨げられて温度が上がる
ポケットやかばんの中で強い圧力をかける 外部衝撃が出火原因の上位。変形は内部の短絡につながる
落とした電池をそのまま使い続ける 外側に傷がなくても内部が損傷している場合がある
非純正のバッテリーを使う 電動工具では最も多い出火原因
自分で分解する 携帯電話機では分解が出火原因の上位に入っている

とくに注意したいのが、防災用として備えているモバイルバッテリーです。車内や物置に入れたままにしている場合、高温下での保管という出火原因に該当します。モバイルバッテリーでは外部衝撃(41件)に次いで2番目に多い原因です。直射日光の当たらない室内に保管し、半年に1回程度は残量と外観を確認してください。備えたつもりが火災の原因になっては本末転倒です。備蓄の考え方は停電に備えるガジェット12分野を比較 必要な電力量を時間別に試算するにまとめています。

危険な兆候と対処

兆候 意味 対処
膨らんでいる 内部でガスが発生している状態 直ちに使用と充電をやめる。押したり穴を開けたりしない
充電中に異常に熱い 内部で異常が起きている可能性 充電をやめ、可燃物のない場所に置いて様子を見る
異臭がする 内部の材料が分解している可能性 使用を中止し、換気する
変形・へこみがある 外部衝撃を受けた痕跡 見た目が動いていても使用をやめる
充電がすぐ切れる、満充電にならない 劣化が進んでいる 寿命として交換を検討する

膨らんだ電池を無理に取り外そうとしたり、押さえつけたりするのは危険です。機器から取り出せない場合は、そのままの状態で回収先に相談してください。発火した場合は、まず周囲に火災を知らせ、身の安全を確保してから119番通報します。消防庁のリーフレットでは、近くに消火器があれば消火器で、消火器がない場合は「バケツやペットボトルで大量の水等をかけてください」としています。NITEも「大量の水で消火し、可能な限り水没させた状態で、119番通報する」よう呼びかけています。炎が消えても再び出火するおそれがあるため、火ばさみ等でバケツ等の水に沈め、消防隊が到着するまで触れないでください。危ないと感じたらすぐに逃げてください。炎が天井に達した場合、一般的に消火器での消火は困難とされています。

ごみで捨ててはいけない理由

令和7年に、廃棄された電池を回収中のごみ収集車から107件、ごみ処理関連施設から106件の火災が発生しています(令和6年はごみ収集車84件、ごみ処理関連施設96件)。収集や処理の過程で電池に力が加わって損傷し、出火につながると考えられます。詳しい機序は本記事の出典資料では確認できていません。

やってはいけない捨て方 何が起きるか
燃えるごみ・燃えないごみに混ぜる 収集車の中で圧縮され、走行中に出火することがある
電池が内蔵された製品をそのまま捨てる ワイヤレスイヤホンや加熱式たばこなど、電池が入っていると気づかれにくい製品がある
端子をむき出しのまま出す 他の金属と触れて短絡する

火災が起きれば、収集の作業員や施設で働く人が危険にさらされます。分別は自分のためだけの手続きではありません。

正しい捨て方

手順 内容
1 その製品にリチウムイオン電池が使われているかを確認する
2 端子部分に絶縁テープを貼るなどして、他の金属と触れないようにする
3 膨らんでいる場合は、無理に取り外さず回収先に相談する
4 自治体の回収区分を確認する。分別方法は市区町村によって異なる
5 小型充電式電池のリサイクルマークがあるものは、家電量販店等に設置された回収箱を利用する
6 回収の対象外や判断に迷う場合は、市区町村の担当窓口かメーカーに問い合わせる

機器そのものの処分については、小型家電リサイクル法に基づく市町村の回収も利用できます。ただし膨らんだ電池は回収ボックスへの投入を断られる場合があるため、事前の確認が必要です。手放す経路全体の比較は使わなくなったガジェットの手放し方5経路を比較 売却・下取り・リサイクルの選び分けにまとめました。

買うときに確認すること

確認項目 内容
PSEマーク モバイルバッテリーは2018年2月1日から電気用品安全法の規制対象(経過措置は2019年1月31日まで)。表示がない製品は販売できない
事業者の連絡先 不具合やリコール時に連絡できる先が明記されているか
リコール情報 購入前に製品名で検索する。すでに使っている製品も定期的に確認する
純正または対応が明示された電池か 電動工具やコードレス掃除機では、非純正品が出火原因の上位
Wh表記 航空機に持ち込む場合は、ワット時定格量の確認が必要になる

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よくある失敗と注意点

防災用として車に積んでおく

高温下での使用・保管は、外部衝撃に次いで多い出火原因です。室内の直射日光が当たらない場所に保管してください。

膨らんだ電池を押して戻そうとする

内部でガスが発生している状態です。圧力を加えると発火の危険があります。触らずに回収先へ相談してください。

安価な非純正バッテリーを使う

電動工具では非純正バッテリーの使用が出火原因の最多でした。純正品か、対応が明示された製品を使ってください。

電池が入っていると気づかずに捨てる

ワイヤレスイヤホン、加熱式たばこ、光るおもちゃなど、小型の製品にも充電式電池が入っています。捨てる前に確認してください。

寝ている間に布団の近くで充電する

放熱が妨げられ、異常が起きても気づくのが遅れます。硬く平らな場所で充電してください。

よくある質問

なぜ火災が増えているのですか

消防庁は件数が右肩上がりであることを示していますが、増加の理由そのものは資料に断定されていません。充電式の製品が家庭に増えていること、使用年数の長い製品が増えていることは背景として考えられます。統計上、製品別ではモバイルバッテリーが突出しており、令和4年の122件から令和7年の482件へと増えています。

膨らんだモバイルバッテリーはどうすればよいですか

使用と充電をやめ、押したり穴を開けたりしないでください。可燃物から離れた場所に置き、自治体の担当窓口かメーカーに処分方法を相談してください。通常の回収ボックスでは受け付けられない場合があります。

充電しっぱなしは危険ですか

満充電後も接続したままにすることが直ちに出火につながるわけではありませんが、統計上の出火原因には充電方法の誤りも挙げられています。就寝中や外出中の充電は、放熱を妨げない場所で行い、異常に気づける状況で使うのが基本です。

何年くらいで交換すべきですか

年数だけで一律には決められませんが、充電の持ちが目に見えて悪くなった、満充電にならないといった症状は劣化のサインです。膨らみや発熱がある場合は年数にかかわらず使用をやめてください。

捨て方が自治体のページに見当たりません

分別方法は市区町村によって異なります。ページで見つからない場合は担当窓口に問い合わせてください。家電量販店などに設置された小型充電式電池の回収箱を利用できる場合もあります。

電池が取り外せない製品はどうすればよいですか

無理に分解しないでください。分解は携帯電話機の出火原因の上位に挙げられています。製品ごと回収に出す方法について、自治体やメーカーに確認してください。

発火したらどう消せばよいですか

まず周囲に知らせ、身の安全を確保してから119番通報してください。消防庁は、近くに消火器があれば消火器で、ない場合はバケツやペットボトルで大量の水等をかけるよう案内しています。NITEも大量の水で消火し、可能な限り水没させた状態で通報するよう呼びかけています。炎が消えても再出火のおそれがあるため、水に沈めたまま消防隊の到着まで触れないでください。危ないと感じたらすぐに逃げてください。炎が天井に達した場合、消火器での消火は一般的に困難です。

子どものおもちゃにも入っていますか

消防庁の集計にはがん具製品も含まれており、令和7年は15件でした。充電して使うおもちゃには充電式電池が入っています。捨てるときの分別も、他の製品と同じ扱いが必要です。

モーターを使う家電の経年劣化による火災については除湿機とサーキュレーターの選び方 方式別の電気代を実測データで比較するでも、扇風機と換気扇の事故統計をもとに整理しています。

電池を使わない機器でも、配線器具は火災の原因になります。公表されている事故事例と対処は電源タップの選び方と安全な使い方 5年で126件の火災事故から考えるで扱っています。

日常の扱いで劣化を抑える方法についてはスマホのバッテリー劣化対策 公表情報で裏付けられることだけを整理するで、メーカーと公的機関の公表情報だけを抜き出して整理しました。

まとめ

リチウムイオン電池からの出火は、消防庁の集計で令和4年601件、令和5年739件、令和6年982件と増え続けています。製品別ではモバイルバッテリーが令和6年に290件と突出し、出火原因の上位は外部衝撃と高温下での使用・保管です。落とさない、高温の場所に置かない、この2点を守るだけで大半の原因に対処できます。電動工具では非純正バッテリー、携帯電話機では分解が原因の上位で、製品ごとに気をつける点が違います。そして膨らみ・発熱・異臭に気づいたら、年数にかかわらず使用をやめてください。捨てるときは端子を絶縁し、自治体の区分か回収箱を利用します。ごみに混ぜると収集車や処理施設で火災が起き、令和7年には合わせて213件が発生しています。

出典

消防庁「リチウムイオン電池等から出火した火災の調査結果の公表(令和7年)」(令和8年3月26日。調査対象は令和7年1月1日から12月31日に発生した火災。火災件数は令和4年601件・令和5年739件・令和6年982件・令和7年1,297件、廃棄された電池を回収中の塵芥車およびごみ処理関連施設からの火災は令和7年に計213件(令和6年は180件)、令和7年の製品別ではモバイルバッテリー482件が最多で携帯電話機93件・電動工具86件が続く。出火原因はモバイルバッテリーが外部衝撃41件と高温下での使用・保管23件、電動工具が非純正バッテリーの使用15件、携帯電話機が外部衝撃32件と分解29件。令和4〜6年の値は前回調査(令和8年1月29日公表)の集計)/製品評価技術基盤機構(NITE)によるリチウムイオン電池搭載製品の事故情報と3つのC/経済産業省 電気用品安全法(モバイルバッテリーは2018年2月1日から規制対象、経過措置は2019年1月31日まで)/小型家電リサイクル法に基づく市町村の回収

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