健康・見守りガジェット

スマート体重計以外の健康ガジェット、種類別の選び方

日本高血圧学会のリーフレットは、家庭で血圧を測るときの条件をかなり細かく決めています。上腕式の血圧計を使い、朝は起床後1時間以内の朝食前・服薬前、晩は就寝直前に、1〜2分椅子に座ってから2回測る。健康ガジェットは買って終わりではなく、こうした使い方まで含めて初めて数字に意味が出ます。1台で体のすべてを把握できる機器はなく、測りたい項目に合わせて血圧計、パルスオキシメーター、心電図機能付きのウォッチ、活動量計や睡眠トラッカーを組み合わせるのが現実的です。この記事では、体組成計・体温計以外の健康ガジェットを対象に、種類ごとの特徴と選び方、医療機器との違い、測定の限界を整理します。

健康ガジェットとは

健康ガジェットとは、血圧や血中酸素飽和度、心拍数、心電図、睡眠状態といった生体データを日常的に記録するための機器の総称です。医療機関で使われる専門的な検査機器とは異なり、家庭や職場など日常の場面で継続的に使えるよう設計されている点が特徴です。測定したデータをスマートフォンのアプリと連携させ、グラフや履歴として可視化できる製品が主流になっています。

この記事では体重・体組成を測る体組成計と、体温を測る体温計を除いた「それ以外の健康ガジェット」を対象とします。用途は大きく分けて、循環器系の状態を把握する血圧計・パルスオキシメーター・心電図機能付きデバイス、日々の活動量や睡眠を記録する活動量計・睡眠トラッカーの2系統に分類できます。体組成計については別記事、体温計については別記事でそれぞれ詳しく取り上げているため、ここでは全体像の見取り図として扱います。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称:医薬品医療機器等法、薬機法)では、疾病の診断・治療・予防に使用されること、または身体の構造・機能に影響を及ぼすことを目的とした機械器具等を「医療機器」と定義しています。健康ガジェットの中には、この定義に基づき医療機器としての認証・承認を受けた製品と、健康管理の目安として使うことを想定した非医療機器の製品が混在しています。

種類別の分類と比較

健康ガジェットは測定項目によって得意分野が異なります。まずは主なカテゴリを一覧で比較します。

カテゴリ 主な測定項目 医療機器区分の例
家庭用血圧計 収縮期・拡張期血圧、脈拍 JIS T 1115に基づく医療機器として認証された製品が主流
パルスオキシメーター 血中酸素飽和度(SpO2)、脈拍数 医療機器として認証された製品と、健康管理用の非医療機器製品が混在
心拍・心電図機能付きデバイス 心拍数、心電図波形 心拍数モニタは非医療機器が多く、心電図(ECG)アプリは個別に医療機器承認を取得した製品のみ対応
活動量計 歩数、消費カロリー、運動強度 基本的に非医療機器(ウェルネス機器)
睡眠トラッカー 睡眠時間、睡眠段階の推定 基本的に非医療機器(ウェルネス機器)

医療機器区分は同じカテゴリの製品でもメーカー・機種によって異なるため、購入前に製品ページや添付文書で確認する必要があります。

血圧計とパルスオキシメーター

家庭用血圧計は、日々の血圧の変化を記録し、体調管理や通院時の情報共有に役立てられます。測定方式には上腕に巻くタイプと手首に巻くタイプがあり、精度の観点からは上腕式が推奨されることが多くあります。国内で医療機器として販売されている電子血圧計の多くは、非観血式電子血圧計の性能要件を定めた日本産業規格「JIS T 1115」に沿って設計・試験されています。パルスオキシメーターは指先などに挟んで血中の酸素飽和度を測定する機器で、呼吸器系の状態を把握したい場合に用いられます。

パルスオキシメーターには、医療機器として承認・認証された製品と、そうでない健康管理用の製品が混在しています。厚生労働省は「承認・認証されたパルスオキシメータ」の製品名・製造販売業者・承認認証番号の一覧(令和4年8月9日現在)を公開しています。一覧に載っていない承認・認証品もあると注記されているので、購入前は製品の箱や添付文書で認証番号を確かめるのが確実です。

家庭血圧の測り方 日本高血圧学会の案内

家庭血圧の正しいはかり方 上腕式 朝と晩 1〜2分座ってから 135/85
図 家庭血圧の正しいはかり方(日本高血圧学会のリーフレットをもとにガジェット広場作成)
項目 日本高血圧学会リーフレットの記載
血圧計の種類 上腕血圧計を選ぶ
測る時間 朝と晩。朝は起床後1時間以内・朝食前・服薬前、晩は就寝直前
測る前 トイレを済ませ、1〜2分椅子に座ってから測る
回数 1機会につき原則2回測り、その平均を取る
判断に使う値 週に5日以上測った平均
高いとされる目安 家庭血圧で上の血圧135以上、または下の血圧85以上

出典 日本高血圧学会「家庭血圧の正しいはかり方」リーフレット(https://www.jpnsh.jp/data/selfmonitoring.pdf)。2026年10月4日確認。数値の判断や治療については主治医に相談してください。この記事は診断や治療の助言ではありません。

血圧は測る条件で動きやすい数値です。朝晩の時刻と座ってからの時間をそろえておくと、日ごとの差が体の変化なのか測り方の違いなのかを見分けやすくなります。リーフレットは、記録した結果を主治医に見せることも勧めています。アプリと連携できる血圧計なら、週ごとの平均を自動で出せるので、この「週5日以上の平均」という考え方と相性がよいと言えます。

心拍・心電図機能付きデバイス

腕時計型のウェアラブル端末には、光学式センサーで心拍数を継続的に記録する機能に加え、電極に触れることで簡易的な心電図を記録できる製品があります。心電図(ECG)機能は日本国内では医療機器として個別に承認を受けた製品でのみ利用できる点に注意が必要です。国内では2020年に、厚生労働省の通知で「家庭用心電計プログラム」「家庭用心拍数モニタプログラム」という医療機器の一般的名称(いずれもクラスII)が設けられました。2021年1月27日の厚生労働省の通知は、Apple Watchの「心電図アプリケーション」(家庭用心電計プログラム)と「不規則な心拍の通知プログラム」(家庭用心拍数モニタプログラム)の適正使用を医療機関向けに案内しています。通知の説明では、安静時に反対側の指でボタンに30秒間触れ続けて、第I誘導心電図に類似したシングルチャネル心電図を取り、洞調律か心房細動を示唆する波形かを分類します。Appleのサポートページには、心電図アプリは22歳未満の人の使用を想定していないとも書かれています。承認を受けていない機種の心拍数表示は、あくまで参考値としての位置づけです。

心電図機能はあくまで簡易的な記録であり、医療機関で行う12誘導心電図のような精密な検査に代わるものではありません。異常な波形が繰り返し記録される場合は、自己判断で様子を見るのではなく医療機関を受診することが基本的な使い方になります。

活動量計と睡眠トラッカー

機能 把握できること
歩数・消費カロリー記録 日々の運動習慣の可視化
心拍数モニタリング 運動強度や安静時の変化の把握
睡眠段階の記録 深い睡眠・浅い睡眠の推定による睡眠の質の把握

日々の歩数や消費カロリー、心拍数の変化を記録する活動量計は、運動習慣の可視化に役立ちます。睡眠の質を記録するタイプの機器と組み合わせることで、日中の活動と夜間の休息の関係を把握しやすくなります。ただし、これらの数値の多くはウェルネス目的の非医療機器によるものであり、診断や治療を目的とした精密な検査値とは性質が異なります。

体組成計・体温計との組み合わせ

体重計に体組成を測定する機能が付いた体組成計や、日々の体温を記録する体温計と、活動量計・血圧計などを組み合わせることで、体重や体温の増減だけでなく、その背景にある活動量や循環器系の状態まで含めた総合的な健康管理ができます。体組成計・体温計それぞれの選び方の詳細は、当サイトの関連記事で個別に取り上げています。

家族での共有・見守り活用

活用シーン 内容
離れて暮らす高齢の家族の見守り 血圧や活動量のデータを家族が確認できるようにする
家族全員での健康管理 複数人分のデータを1つのアプリでまとめて管理する

健康ガジェットの中には、測定データを家族と共有できる機能を備えた製品もあります。離れて暮らす高齢の家族の体調変化に気づきやすくなるなど、本人の健康管理だけでなく家族の安心にもつながる活用方法として注目されています。

測定精度の限界と医療機器との違い

健康ガジェットの精度について、よく「医療機器並みに正確」と語られることがありますが、公式にはそこまで断定されていない製品がほとんどです。腕時計型デバイスの心拍数測定の多くは、皮膚を通して光の反射量の変化を捉える光電式容積脈波(PPG)という方式を採用しています。この方式は運動中の体動や、装着位置のズレ、肌への密着度、体温、皮膚の色などの影響を受けやすいという性質があり、安静時に比べて運動中の測定値は誤差が生じやすいとされています。

睡眠トラッカーが示す「深い睡眠」「浅い睡眠」といった睡眠段階も、脳波を用いた医療機関でのポリソムノグラフィー検査(PSG)による判定とは異なり、加速度センサーや心拍数の変化パターンから統計的に推定した数値です。個々のメーカーが採用しているアルゴリズムの詳細や具体的な誤差の範囲は、公式には公表されていない場合が多く、あくまで日々の傾向をつかむための目安として捉えるのが実践的です。

健康ガジェットの多くは、薬機法上の医療機器としての承認・認証を受けていないウェルネス機器です。病気の診断や治療を目的とした機器ではなく、体調に異常を感じた場合は自己判断せず医療機関を受診してください。医療機器として承認・認証された製品であっても、その用途は添付文書に記載された範囲に限られます。

選び方・選定基準

健康ガジェットを選ぶ際は、次のような基準を確認しておくと目的に合った機器を見つけやすくなります。

  • 測定したい項目が自分の健康管理の目的と合っているか
  • 通院時に情報として使う予定があるか、医療機器としての認証・承認が必要か
  • 記録データの管理方法や他のアプリとの連携のしやすさ
  • 装着形態や測定の手間が、無理なく続けられるものか
  • 家族との共有や見守り機能が必要かどうか

選ぶときの実践的なコツ

  • 血圧を通院時の相談材料にしたい場合は、JIS T 1115に基づき医療機器として認証された上腕式を優先する
  • 心電図機能を使いたい場合は、対応国・地域や医療機器承認の有無を購入前に必ず確認する
  • 複数の機器を導入するなら、先にデータ連携できるアプリの系統を決めてから機種を選ぶと、後からの一元管理がしやすい
  • 就寝時も装着する機器は、実際の重さや素材の感触を店頭などで確認してから選ぶ

一つの機器だけで健康状態のすべてを把握することは難しいため、目的に応じて複数の機器を組み合わせる方法も検討したいところです。記録したデータを一つのアプリにまとめて管理できると、日々の変化を継続的に見比べやすくなります。健康ガジェットは種類によって得意分野が異なるため、体重計だけに頼らず目的に応じて組み合わせることで、より立体的な健康管理につながります。

よくある質問

どの機器から揃えるのがおすすめですか?

自分が最も気にしている健康課題(血圧、心拍、睡眠など)に直結する機器から始めるのが、継続しやすい始め方です。

医療機器認証・承認がない製品は信頼できませんか?

日常的な傾向把握としては十分に活用できますが、診断や治療の判断材料とする場合は医療機器として認証・承認された製品を選ぶことが推奨されます。

スマートウォッチの心電図機能は誰でも使えますか?

国内では医療機器として個別に承認を受けた機種・地域設定でのみ利用できます。未承認の機種や地域設定では心電図機能自体が有効にならない場合があります。

複数のメーカーの製品を組み合わせても問題ありませんか?

問題ありませんが、それぞれ別のアプリで管理することになるため、データを一元化したい場合は連携機能の有無を確認するとよいでしょう。

睡眠トラッカーの精度はどれくらい信頼できますか?

医療機関で行うポリソムノグラフィー検査ほどの精度はないとされていますが、日々の傾向を把握する目的では活用されています。

高齢の家族に持たせる場合、何を優先すべきですか?

操作のシンプルさと、家族が遠隔で確認できる共有機能の有無を優先すると、見守りの目的に合った選び方ができます。

パルスオキシメーターは毎日使う必要がありますか?

呼吸器系の状態が気になるときや体調管理の一環として使う製品であり、毎日欠かさず使う必須の機器ではありません。気になる症状があるときの参考情報として活用するのが一般的です。

運動中の心拍数の数値がずれることはありますか?

光学式センサーは体動や装着のずれの影響を受けやすいため、激しい運動中は安静時に比べて誤差が生じやすいとされています。正確な数値が必要な場面では胸部装着タイプの心拍センサーが用いられることもあります。

口腔ケアの機器については電動歯ブラシの選び方 手磨きとの差を示した研究データから考えるで、手磨きとの差を示した系統的レビューの数値をもとに整理しています。

これらの機器が出す数値の制度上の位置づけはウェアラブル端末の計測値はどこまで信用できるか 医療機器との境界を制度から読むで整理しました。

まとめ

健康管理ガジェットには、体重計・体温計以外にも、血圧計、パルスオキシメーター、心拍・心電図機能付きデバイス、活動量計、睡眠トラッカーなど多様な選択肢があります。それぞれ得意な測定項目と医療機器区分が異なるため、通院時の資料として使うのか、日々の傾向把握として使うのかという目的に応じて機器を選ぶことが重要です。医療機器としての認証・承認の有無や測定精度の限界を踏まえたうえで、体重計だけに頼らず目的に応じて組み合わせることで、より立体的な健康管理につながります。

聞こえに関する機器は、健康ガジェットとは制度上の位置づけが異なります。詳しくは補聴器と集音器は何が違うのか 制度上の位置づけと購入前に確認することをご覧ください。

出典・参考情報

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法、薬機法)における医療機器の定義。疾病の診断・治療・予防に使用されること、または身体の構造・機能に影響を及ぼすことを目的とした機械器具等が医療機器とされています/日本産業規格JIS T 1115(非観血式電子血圧計)。国内で医療機器として販売されている電子血圧計の多くがこの規格に沿って設計・試験されています/厚生労働省「承認・認証されたパルスオキシメータについて」(令和4年8月9日現在の一覧)。健康ガジェットの多くは薬機法上の医療機器としての承認・認証を受けていないウェルネス機器であり、表示される数値は診断を目的としたものではありません。体調に不安がある場合は医療機関に相談してください。/厚生労働省「『家庭用心電計プログラム』及び『家庭用心拍数モニタプログラム』の適正使用について」(令和3年1月27日 薬生機審発0127第7号・薬生安発0127第4号)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc5623&dataType=1&pageNo=1/Apple「Apple Watchの心電図アプリで心電図をとる」https://support.apple.com/ja-jp/120278/日本高血圧学会「家庭血圧の正しいはかり方」https://www.jpnsh.jp/data/selfmonitoring.pdf/厚生労働省「承認・認証されたパルスオキシメータについて」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/pulse_oximeter.html(いずれも2026年10月4日確認)

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