領収書や請求書、契約書などの紙の書類をまとめて電子化したいとき、ドキュメントスキャナーが選択肢に挙がります。単に読み取れればよいわけではなく、読み取り速度や重送検知といったハードウェアの性能に加えて、経理書類を電子化する場合は電子帳簿保存法が定めるスキャナ保存の要件を満たしているかも確認する必要があります。この記事では「ADF(自動給紙)の対応枚数と読み取り速度」「重送検知機能」「電子帳簿保存法のスキャナ保存要件」「OCR・自動仕分け機能」を中心に整理します。
選び方の要素分解
ADF(自動給紙)の対応枚数と読み取り速度
| 利用シーン | ADF対応枚数の目安 | 読み取り速度の目安 |
|---|---|---|
| 家庭用・少量利用 | 10〜20枚程度 | 20枚/分程度 |
| 小規模オフィス | 50枚程度 | 30〜40枚/分程度 |
| 大量処理・業務用 | 50枚超 | 40枚/分以上 |
ADF(オートドキュメントフィーダー)は、複数枚の原稿を1枚ずつ自動で送り込みながら連続して読み取る機構です。一度にセットできる原稿の枚数(対応枚数)と、1分あたりに読み取れる枚数(読み取り速度)は、まとめてスキャンする書類の量が多いほど作業時間に直結します。両面を一度の通過で同時に読み取れる両面同時読み取りに対応しているかも、効率を左右するポイントです。
重送検知機能
重送とは、複数枚の原稿が重なったまま同時に送られてしまい、一部のページが読み取られないまま次に進んでしまう現象です。超音波センサーなどで紙の重なりを検知し、エラーとして知らせる重送検知機能があれば、書類の抜け漏れに気づかないまま処理を終えてしまうリスクを減らせます。大量の書類をまとめて処理する用途では、優先的に確認したい機能です。
電子帳簿保存法のスキャナ保存要件(経理書類を扱う場合は重要)
請求書や領収書など国税関係書類をスキャナで保存し紙の原本を破棄するには、電子帳簿保存法が定める「解像度200dpi以上」「赤・緑・青それぞれ256階調以上のカラー画像による読み取り」といった要件を満たす必要があります(注文書・見積書の写しなど、国税庁長官が定める一般書類はグレースケールでの保存も認められています)。この要件は多くの市販スキャナーの標準的な読み取り性能で満たせる水準ですが、購入前に対応解像度・階調を確認しておくと安心です。タイムスタンプについては、令和3年度の税制改正により、令和4年(2022年)1月1日以後に保存する書類から、訂正・削除の履歴が確認できるシステム(訂正・削除ができないシステムを含みます)に保存して入力期間内の入力が確認できれば、その確認をもってタイムスタンプの付与に代えられるようになりました。令和6年(2024年)1月1日以後の保存分から適用されたのは令和5年度の改正で、解像度などの情報を保存する要件の廃止といった別の内容です。タイムスタンプを付与する運用を選ぶ場合、付与の期限は記録事項の入力期間と同じ扱いになります。入力期間の目安は次のとおりです。
| 入力の方式 | 入力期間の目安(一問一答の説明) |
|---|---|
| 作成・受領後、速やかに入力する | おおむね7営業日以内 |
| 業務処理サイクルを経過した後、速やかに入力する(事務の処理に関する規程を定めている場合に限る) | 受領等から最長2か月とおおむね7営業日以内。2か月は暦の上で数え、4月21日受領なら6月20日からおおむね7営業日後まで |
| 一般書類(注文書・見積書の写し、自己が作成した納品書の写しなど) | 入力期間の制限なく、適時に入力できる |
スキャナが「スキャナ」でなくてもよい理由と、解像度の判定方法
国税庁の一問一答(令和8年7月版)は、スマートフォンやデジタルカメラでの読み取りについても、要件を満たすかどうかは「読み取った書類の大きさと画素数」で判断すると説明しています。A4サイズ(縦297mm×横210mm)で200dpi以上を満たすには、縦2,338画素・横1,654画素、合計で約387万画素以上が必要という計算例が示されています。
また、スマホなどで撮影した画像のプロパティに「72dpi」と表示されることがありますが、これは画像の解像度が不明なときに72dpiを記録する規格上の扱いによるもので、必ずしも実際の解像度を示すものではない、との注意書きがあります。階調は、赤・緑・青が各256階調であれば、ファイルのプロパティに「24ビット」と表示される点で確認できるとされています。
解像度などの情報は保存不要になったが、200dpiの要件は残る
令和5年度の税制改正で、読み取り時の解像度・階調・書類の大きさに関する情報を保存しておく要件は廃止されました。ただし、スキャニング時の解像度が200dpi以上であること自体は引き続き必要です。税務調査などで確認を求められた場合は、JPEGやTIFF、PDFのプロパティ情報を示すなどして説明すればよい、と一問一答に書かれています。スキャナを選ぶときは、カタログの読み取り解像度に加えて、保存形式ごとにプロパティが確認できるかも見ておくと後で困りません。
紙の原本はいつ捨てられるか、検索用のOCRは必須か
- 令和4年1月1日以後に保存する国税関係書類は、スキャナで読み取り、電子データと紙の記載事項が同等であることを確認(折れ曲がりがないかも含む)したあとであれば、原本を即時に廃棄して差し支えないとされています。
- ただし入力期間を過ぎた場合は、電子データだけでは保存に代えられず、紙のまま保存します(問24)。
- 検索機能には、取引年月日・取引金額・取引先で検索できることなどが求められますが、画像をテキスト化するOCR機能が備わっていなくても構いません。手入力やフォルダ分けで条件を設定できれば要件を満たす、と問41に書かれています。
- 日付・金額の範囲指定や、2つ以上の項目を組み合わせた検索も規則上の要件ですが、税務職員によるデータのダウンロードの求めに応じられるようにしている場合は、この2つの機能は不要とされています(問41)。
使うソフトが要件を満たしているか分からない場合、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が電子帳簿保存法の機能要件への適合性を確認(認証)したソフトウェアは、スキャナ保存の機能要件を満たしているといえる、と国税庁は説明しています。認証を受けた製品は、JIIMAのサイトや、国税庁サイトに掲載されたリンクで確認できます。システム関係書類の備付けなど、機能以外の要件もあるため、すべてを満たす必要がある点は変わりません。
本節は国税庁の公表資料の整理であり、個別の税務判断ではありません。実際の取り扱いは、税務署や税理士など専門家に確認してください。
OCR・自動仕分け機能
読み取った書類の文字を認識してテキストデータ化するOCR機能があると、あとから内容で検索しやすくなります。書類の種類(領収書・名刺・契約書など)を自動判別してフォルダ分けする機能を備えた製品もあり、大量の書類を継続的に処理する用途では作業時間の短縮につながります。
選び方・選定基準
- 1回にまとめてスキャンする書類の量に見合ったADF対応枚数・読み取り速度の製品を選ぶ。
- 大量の書類を扱うなら、重送検知機能の有無を確認する。
- 経理書類を電子保存して紙を破棄したいなら、電子帳簿保存法のスキャナ保存要件(解像度・階調)を満たしているかを確認する。
- あとから内容で検索したいならOCR機能、書類の種類ごとに自動整理したいなら自動仕分け機能の有無を確認する。
- 家庭での少量利用か、業務での大量処理かで、必要な性能の水準を見極める。
よくある失敗・注意点
スキャナーを買っただけで電子帳簿保存法対応が完了すると誤解する
重送検知がなく、複数枚重なって読み取られたことに気づかない
家庭用の少量スキャンに業務用の大型機を選んで持て余す
よくある質問
複合機のスキャナ機能ではだめですか。
複合機のスキャナ機能でも読み取り自体は可能ですが、専用のドキュメントスキャナーはADFの対応枚数・読み取り速度・重送検知など、大量の書類を連続処理する用途に特化して設計されています。処理量が多い場合は専用機の方が効率的です。
電子帳簿保存法の要件を満たせば、紙の原本はすぐ処分してよいですか。
解像度・階調等の読み取り要件に加えて、タイムスタンプの付与または訂正・削除履歴が残るシステムの利用といった要件も満たす必要があります。制度の詳細な要件は変更される場合があるため、最新の情報を国税庁等の公式情報で確認してください。
タイムスタンプは必ず必要ですか。
令和4年(2022年)1月1日以後に保存する書類については、必ず付与する必要はありません。訂正・削除の履歴が確認できるシステムに保存し、入力期間内に入力したことが確認できれば、その確認をもってタイムスタンプの付与に代えられるとされています(令和3年度の税制改正)。
重送検知はどんな仕組みで動いていますか。
超音波センサーで紙の重なりを検知する方式の製品があります。メーカーの説明では、重送を検知するとエラーとして知らせる、とされている例があります。一方で重送検知を搭載していない機種もあるため、大量に読み取るなら仕様表で有無を確認してください。
名刺の管理にも使えますか。
OCR機能や書類種別の自動判別機能を備えた製品であれば、名刺の文字情報を読み取ってデータ化する用途にも使えます。名刺管理を主目的にする場合は、対応の可否を製品ページで確認してください。
家庭用ならどれくらいのADF対応枚数があれば足りますか。
まとめてスキャンする頻度や量によりますが、月に数回、数十枚程度をまとめて処理する家庭用途であれば、コンパクトなモデルの対応枚数でも十分な場合が多いです。想定する利用量に見合った製品を選んでください。
スキャンしたデータはどこに保存すればよいですか。
パソコン本体のほか、クラウドストレージや家庭用NASに保存する方法があります。経理書類として電子帳簿保存法の要件を満たす保存を行う場合は、訂正・削除履歴が残る仕組みかどうかも確認してください。
まとめ
ドキュメントスキャナーを選ぶときは、まず1回に処理する書類の量に見合ったADF対応枚数・読み取り速度を確認し、大量の書類を扱うなら重送検知機能、経理書類を電子保存するなら電子帳簿保存法のスキャナ保存要件を確認するとわかりやすくなります。スキャナー本体の性能だけでなく、保存後の運用(タイムスタンプまたは訂正削除履歴が残るシステム)まで含めて検討することが、経理書類を電子化するうえでのポイントになります。
出典・参考情報
電子帳簿保存法のスキャナ保存制度における読み取り要件(解像度200dpi以上、赤・緑・青それぞれ256階調以上のカラー画像。一般書類はグレースケール可)、令和3年度の税制改正によるタイムスタンプ要件の緩和(令和4年1月1日以後に保存する書類について、訂正・削除履歴が確認できるシステムへの保存で付与に代えられる)、入力期間の期限(事務の処理に関する規程を定めている場合は、受領等から最長2か月とおおむね7営業日以内)は、国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」および同制度を解説する会計ソフトメーカーの公式情報に基づいています。ADF・読み取り速度・重送検知機能の仕組みは、複数のスキャナー専門メディア・メーカーの解説記事に基づいています。制度は改正される場合があるため、最新の要件は国税庁の公式情報で確認してください。/国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(令和8年7月。入力期間、スマートフォン等での読み取りと解像度の判定、令和5年度改正後の解像度情報の扱い、紙原本の廃棄の条件、検索機能の要件、JIIMA認証ソフトウェア)
