パソコン・PC周辺機器

家庭用プリンターの選び方 印刷コストを計算して総額で比べる

家庭用プリンターは、本体価格の安さだけで選ぶと後から負担が大きくなる代表的な機器です。理由は単純で、多くの製品が本体を安く売り、インクで回収するという価格構造になっているためです。この記事では方式の違いを整理したうえで、1枚あたりの印刷コストを自分で計算する手順を示します。年間の印刷枚数が分かれば、本体が高くても総額が安くなる機種を見つけられます。使わない期間の目詰まり対策や、使い終わったカートリッジの回収先まで扱います。

この記事でわかること

インクジェットとレーザーの違いと向き不向き/1枚あたりの印刷コストを計算する手順/本体価格とインク代を合わせた総額の比べ方/大容量タンクモデルが得になる条件/目詰まりを防ぐ使い方と、カートリッジ・本体の回収先

方式の違いを整理する

項目 インクジェット レーザー
仕組み 液体のインクを紙に吹き付ける 粉状のトナーを熱で定着させる
本体価格 1万〜4万円 1万5千〜6万円
写真の印刷 得意 不得意
文書の印刷 普通 得意(文字が鮮明)
印刷速度 遅め 速い
1枚あたりのコスト 高くなりやすい 安くなりやすい
使わない期間の影響 インクが乾いて目詰まりする 影響を受けにくい
本体の大きさ 比較的小型 大きく重い
消費電力 小さい 定着時に大きい

選び分けの基準は明確です。写真を印刷するならインクジェット、文書を大量に印刷するならレーザー。そして月に数枚しか印刷しないなら、目詰まりの影響を受けにくいレーザーか、コンビニのネットプリントという選択肢もあります。

インクの種類

種類 特徴 向いている用途
染料インク 紙に染み込む。発色が良く写真向き。水に弱い 写真、カラー印刷
顔料インク 紙の表面に定着する。文字がにじみにくく耐水性がある 文書、宛名、屋外で使う書類

写真も文書も印刷する家庭では、黒だけ顔料、カラーは染料という構成の製品が使いやすくなります。仕様表でインクの種類を確認してください。

印刷コストを自分で計算する

ここが本記事の中心です。カタログには1枚あたりのコストが記載されていることもありますが、自分で計算できるようにしておくと機種の比較ができます。

計算に必要な数字

数字 どこで分かるか
インク1セットの価格 販売価格。純正品の価格で計算する
印刷可能枚数 メーカーが公表している。ISO/IEC規格に基づく測定値
用紙の単価 用紙の価格 ÷ 枚数
本体価格 購入価格
年間の印刷枚数 自分の使い方から見積もる

印刷可能枚数の表示は、国際規格に基づく測定方法で算出されています。インクジェットのカートリッジはISO/IEC 24711、モノクロのトナーはISO/IEC 19752、カラーのトナーはISO/IEC 19798が測定方法を定めており、メーカーが異なっても同じ条件で測った数値なので横並びで比較できます。ただし実際の使い方(写真が多い、余白の少ない資料が多い)によって、公表値より少なくなることはあります。なおISO/IEC 24711はカラーインクジェット用のカートリッジを対象とした規格で、モノクロ専用インクジェットプリンターについては、JEITAの印刷コスト表示ガイドライン第3版がA4文書印刷の測定をISO/IEC 22505(2019年12月発行)に従うよう定めています。

計算式

求めるもの 計算式
1枚あたりのインク代 インク1セットの価格 ÷ 印刷可能枚数
1枚あたりの総コスト 1枚あたりのインク代 + 用紙の単価
本体を含めた1枚あたり 上記 + (本体価格 ÷ 想定する総印刷枚数)

計算例

年間300枚印刷する家庭で、5年使う前提(総1,500枚)として2機種を比べます。数値は計算の手順を示すための例です。

本体が安いA機種と本体が高いB機種で、1,500枚印刷したときの総額(49,500円と44,000円)を比べた図
図 プリンター2機種の1,500枚印刷時の総額(記事の計算例をもとに作成)
項目 A機種(本体が安い) B機種(本体が高い)
本体価格 12,000円 35,000円
インク1セット 5,000円 6,000円
印刷可能枚数 200枚 1,000枚
1枚あたりのインク代 25円 6円
1,500枚分のインク代 37,500円 9,000円
本体+インクの総額 49,500円 44,000円

この例では、本体が2万3千円高いB機種のほうが、5年間の総額では安くなります。分かれ目は印刷枚数です。年間100枚以下ならA機種のほうが安く済みますが、印刷が多い家庭ほどインク代の差が効いてきます。まず自分の年間印刷枚数を見積もることから始めてください。

大容量タンクモデルという選択肢

カートリッジではなく本体のタンクにインクを補充する方式の製品があります。本体価格は高めですが、1枚あたりのインク代が大きく下がります。年間の印刷枚数が多い家庭では、この方式が総額で有利になることがあります。上の計算式に当てはめて、自分の枚数で比べてみてください。

メーカーが表示する印刷コストの算出ルール

JEITA(電子情報技術産業協会)のプリンター出荷統計では、2025年の国内向け出荷3,520,699台のうちインクジェットが2,487,902台で、約7割を占めます。残りの1,032,797台は、JEITAの区分で「ページ」プリンターとされるものです。

区分(JEITAの表記) 2025年 国内出荷台数 構成比 前年比
インクジェット 2,487,902台 約70.7% 102%
ページ 1,032,797台 約29.3% 99%
プリンター総計 3,520,699台 100% 101%

台数と前年比はJEITA「2025年プリンター出荷統計」の年合計・日本の欄で、構成比は台数から計算した値です。

カタログやメーカーサイトに載る1枚あたりの印刷コストは、JEITAの「家庭用インクジェットプリンターの印刷コスト表示に関するガイドライン第3版」(2022年7月20日)が算出と表示の統一基準を定めています。A4の文書印刷はインク代のみで用紙代を含まず、L判の写真印刷はメーカー推奨の写真用紙代を加えた額です。代表サイズはA4(210×297mm)とL判(89×127mm)の2種類で、印刷モードはA4なら「普通紙」、L判なら「メーカー推奨の写真用紙」を選んだときの初期設定とされています。写真画質の高いモードで刷る場合は、表示よりインクを多く使うと考えておくのが無難です。価格はメーカー希望小売価格(ない場合は直販サイトの価格)で、マルチパックではなく最小販売単位のものを使います。計算はカートリッジごとの「価格÷印刷可能枚数」を全色分合計する方式で、上の計算例はこれを簡略化したものです。なお同ガイドラインは大容量タンク方式を適用範囲に含めていません。2022年5月時点で、インクボトル方式の印刷可能枚数を測る国際規格・国内規格がないためです。タンクモデルの印刷コストは各社独自の算出です。同ガイドラインは、インクボトル方式の印刷コストを独自に算出する場合も、測定にはガイドラインと同じチャートを使い、使ったチャートを明記することを推奨しています。算出条件の注記まで読んで比べてください。

複合機の機能をどこまで求めるか

機能 あると効く場面
スキャン 書類の電子化、証明書の提出、手書きメモの保存
自動原稿送り(ADF) 複数枚の書類をまとめてスキャンする
自動両面印刷 用紙代の節約、資料の作成
FAX 業務で必要な場合のみ。家庭では使用頻度が下がっている
ダイレクト印刷 パソコンを介さずスマートフォンやSDカードから印刷する
2段給紙 普通紙と写真用紙を入れ替えずに使い分ける

使わない機能に費用をかけないという観点では、FAXの要否がもっとも分かれます。スキャン機能はスマートフォンのカメラでも代替できる場面が多いため、書類の枚数が多いかどうかで判断してください。

接続方式

方式 特徴
USB接続 確実だが、つないだパソコンからしか印刷できない
Wi-Fi接続 家族の複数の端末から印刷できる。設置場所の自由度が高い
有線LAN 安定する。ルーターの近くに置ける場合に有効
スマートフォンから直接 専用アプリまたはOSの印刷機能を使う

家庭で複数人が使うならWi-Fi接続が前提になります。設置場所を決めるときは、電波が届くかを確認してください。宅内の無線環境についてはWi-Fiルーターの選び方、自宅用と外出用の違いとメッシュWi-Fiとは何か 家庭用ルーターとの違いで扱っています。

使わない期間があるなら

インクジェットの弱点は、使わない期間が続くとインクが乾いてノズルが詰まることです。詰まると印刷にすじが入り、クリーニング動作でインクを消費します。

対策 内容
定期的に印刷する 月に1回程度、カラーを含むテスト印刷を行う
電源はボタンで切る コンセントを抜くと、ヘッドを保護する位置に戻らない場合がある
直射日光と高温を避ける インクの劣化が早まる
使用頻度が低いなら方式を変える レーザー、またはコンビニのネットプリントを使う

年に数回しか印刷しないのであれば、プリンターを持たないという判断も合理的です。コンビニのネットプリントは1枚あたりの単価こそ高くなりますが、本体代もインク代も目詰まりの心配もありません。年間20枚程度なら、持たないほうが安く済む計算になります。写真の印刷も、店頭やネットのプリントサービスのほうが仕上がりで有利な場合があります。

カートリッジと本体の処分

使用済みインクカートリッジ

使用済みの純正インクカートリッジは、メーカー4社(ブラザー、キヤノン、エプソン、日本HP)が共同で行っている「インクカートリッジ里帰りプロジェクト」で回収されています。回収箱は2025年3月現在、全国約3,600カ所の郵便局のほか、一部の自治体の施設などに設置されています。集まったカートリッジはゆうパックで仕分け拠点に送られ、メーカーごとに仕分けされたあと、各社がリサイクルします。

家電量販店の店頭に各メーカーの回収箱が置かれている場合もあります。自治体によっては公共施設に回収箱を設置しているので、近くの窓口を確認してみてください。

リサイクルインクと特許をめぐる最高裁判決

使用済みの純正カートリッジを洗浄し、インクを詰め直して販売する再生品については、特許権との関係が最高裁まで争われました。最高裁判所第一小法廷の2007年(平成19年)11月8日判決(平成18年(受)第826号)は、特許製品に加工や部材の交換がされ、元の製品と同一性を欠く製品が新たに製造されたと認められる場合には、特許権者が権利を行使できるとしています。新たな製造に当たるかどうかは、製品の属性、特許発明の内容、加工や交換の態様、取引の実情などを総合して判断するとされました。この事件では、構造上インクの再充てんが予定されていないタンクを補充できるよう変形させた点などが重視され、再生品の輸入・販売の差止めと廃棄が認められています。ただし、再生品であれば一律に特許権侵害になるという判断ではありません。判決は特許権者と再生品を輸入・販売する事業者の間の事案で、判決文には利用者が再生品を使うことの是非についての判断は見当たりません。購入する場合は、販売元の情報とプリンターメーカーの保証条件を確認してください。

本体の処分

プリンターは小型家電リサイクル法の対象品目に含まれます(同法施行令第1条第8号「プリンターその他の印刷装置」)。対象は一般消費者が通常の生活で使う機器に限られています。市町村の回収か、認定事業者の回収を利用できます。大きさによっては回収ボックスに入らないため、窓口への持ち込みになります。処分の経路全体は使わなくなったガジェットの手放し方5経路を比較 売却・下取り・リサイクルの選び分けにまとめました。

よくある失敗と注意点

本体価格の安さだけで選ぶ

本体を安く売り、インクで回収する価格構造の製品があります。年間の印刷枚数を見積もり、総額で比べてください。

印刷可能枚数を確認しない

インク1セットで何枚印刷できるかが分からないと、1枚あたりのコストは計算できません。仕様表で確認してください。

使わない期間を作って目詰まりさせる

クリーニングでインクを消費し、結果的に高くつきます。月1回の印刷を習慣にするか、方式を変えてください。

コンセントを抜いて電源を切る

ヘッドが保護位置に戻らないまま止まることがあります。本体のボタンで電源を切ってください。

使わない機能に費用をかける

FAXや2段給紙は、必要な家庭とそうでない家庭がはっきり分かれます。使う場面を想像してから選んでください。

よくある質問

インクジェットとレーザーはどちらを選ぶべきですか

写真を印刷するならインクジェット、文書を大量に印刷するならレーザーです。印刷頻度が低い場合も、目詰まりの影響を受けにくいレーザーに分があります。設置スペースと本体の重さは、レーザーのほうが必要になります。

1枚あたりのコストはどう計算しますか

インク1セットの価格を印刷可能枚数で割ると、1枚あたりのインク代が出ます。これに用紙の単価を足したものが1枚あたりの総コストです。本体価格を想定する総印刷枚数で割った額を加えると、本体を含めた実質的な単価になります。

印刷可能枚数はメーカー間で比べられますか

比べられます。インクジェットのカートリッジはISO/IEC 24711、モノクロのトナーはISO/IEC 19752、カラーのトナーはISO/IEC 19798という国際規格が測定方法を定めており、同じ条件で測った数値が公表されています。ただし実際の印刷内容によって公表値より少なくなることはあります。なお大容量タンク方式はJEITAの印刷コスト表示ガイドラインの対象外で、印刷可能枚数も各社独自の算出のため、カートリッジ方式と単純に比べることはできません。

互換インクを使ってもよいですか

純正品より安価ですが、製品によっては保証の対象外となる場合や、印刷品質・目詰まりの面で違いが出ることがあります。使用する場合は、メーカーの保証条件を確認してから判断してください。本記事の計算例は純正品の価格を前提にしています。

年に数回しか印刷しません

プリンターを持たず、コンビニのネットプリントや店頭のプリントサービスを使う選択肢があります。1枚あたりの単価は高くなりますが、本体代もインク代も目詰まりの心配もありません。年間20枚程度なら、持たないほうが安く済む計算になります。

スマートフォンから直接印刷できますか

Wi-Fiに対応した機種であれば、専用アプリやOSの印刷機能から印刷できます。購入前に、自分の端末のOSに対応しているかを確認してください。

使用済みのカートリッジはどこに出せばよいですか

メーカー4社が共同で行っている里帰りプロジェクトの回収箱が、全国約3,600カ所の郵便局など(2025年3月現在)に設置されています。家電量販店の店頭や、自治体の公共施設に置かれている場合もあります。

プリンター本体はどう処分しますか

小型家電リサイクル法の対象品目に含まれるため、市町村の回収を利用できます。回収ボックスに入らない大きさの場合は窓口への持ち込みになります。分別方法は自治体によって異なるので確認してください。

印刷まわりを整えたあとは、机の上の他の機器との兼ね合いも出てきます。配線の整理はパソコン周辺機器のケーブル整理術、使わなくなった機器の処分はパソコンの処分と買取 データ消去の手順から回収制度までで扱っています。

まとめ

家庭用プリンターは、本体価格ではなく本体とインクを合わせた総額で比べてください。インク1セットの価格を印刷可能枚数で割れば1枚あたりのインク代が出ます。年間の印刷枚数と使う年数をかけて総額を出すと、本体が高い機種のほうが安くなるケースは珍しくありません。印刷可能枚数はISO/IEC規格に基づく測定値なので、メーカーが違っても横並びで比較できます。方式は、写真ならインクジェット、文書中心ならレーザー。年に数回しか印刷しないなら、持たずにネットプリントで済ませるのも合理的な判断です。使用済みカートリッジは郵便局などに設置された回収箱へ、本体は小型家電リサイクル法に基づく市町村の回収へ出してください。

紙の書類をペーパーレス化したい場合は、印刷とは逆方向のドキュメントスキャナーも選択肢になります。ドキュメントスキャナーの選び方 電子帳簿保存法の要件と読み取り性能の見方で扱っています。

出典

ISO/IEC 24711(インクジェットカートリッジの印刷可能枚数の測定方法)、ISO/IEC 19752(モノクロトナーカートリッジ)、ISO/IEC 19798(カラートナーカートリッジ)/インクカートリッジ里帰りプロジェクト(ブラザー・キヤノン・エプソン・日本HPの4社による共同回収。全国およそ3,600の郵便局等に回収箱を設置)/使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(小型家電リサイクル法)の対象品目 第8号 プリンターその他の印刷装置/一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)「2025年プリンター出荷統計」および「家庭用インクジェットプリンターの印刷コスト表示に関するガイドライン第3版」(2022年7月20日)/最高裁判所第一小法廷判決 平成18年(受)第826号(平成19年11月8日、特許権侵害差止請求事件)

文書ではなく写真をプリントする場合は、店頭やネット注文との費用差と保存性の違いも判断材料になります。4つの経路の比較は写真プリントの選び方 家庭用・店頭・ネットの費用比較とL判で写真が切れる理由にまとめました。

-パソコン・PC周辺機器